首都圏の湘南新宿ラインや特急「成田エクスプレス」、関西圏のおおさか東線や特急「はるか」。これらの路線や列車は、既存の線路を活用し、かつて旅客列車が走っていなかった経路で運転されています。多くの旅客が当たり前のように使っているこれらの路線・列車ですが、実は「貨物線」を通っていることはご存知でしょうか?
貨物線とは、文字通り貨物輸送のための線路。特に旅客列車が走らない(走らなかった・少なかった)路線が、こう呼ばれます。
貨物線は貨物需要が大きい場所に建設されるので、港湾地区や工場、貨物駅などに延びるものが多くを占めます。そのほかにも、列車の増発を目的に旅客列車用と貨物列車用の線路を分離するため、旅客線に並行したり、あるいはバイパス線として、貨物線が建設されることもあります。
その並行線やバイパス線として作られたのが、首都圏の山手貨物線(田端~新宿~品川間)や東海道貨物線(浜松町~東京貨物ターミナル~鶴見~小田原間・品川~西大井~鶴見間)、東北貨物線(田端~大宮間)。これらは駅では一般に案内されない名称ですが、いずれも湘南新宿ラインの経由ルートであるほか、山手貨物線は埼京線など、東海道貨物線は横須賀線や相鉄線直通列車などが走るルートとして活用されています。
大阪のおおさか東線も、バイパス線としてつくられた路線。もともとは、現在の大阪環状線を経由していた貨物列車を走らせるために作られた「城東貨物線」という貨物線でした。同じように、東京近郊を走る武蔵野線や京葉線も、もとはバイパス貨物線として計画されていましたが、こちらは途中で計画が変更され、府中本町~鶴見間などの一部を除いて、大部分が旅客列車の走る路線として開業しています。
JR東日本が2031年度の開業を目指して計画を進める「羽田空港線アクセス線」も、田町~東京貨物ターミナル間は貨物線を転用して整備されます。都市部で整備された貨物線は、貨物だけでなく旅客の利便性向上も実現しているのです。
【11月29日追記:表記を一部訂正しました】