鉄道コム

鉄道コらム

同じ形式なのに、前面スタイルが違う車両がいる? 東急1000系「仲間はずれの顔」な電車

2023年6月14日(水) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

昭和から平成の過渡期に登場した、東急電鉄の1000系。現在は3両編成を組み、池上線・東急多摩川線をのんびりと走っています。

1000系の前面スタイルは、貫通扉を進行方向に対して右側に寄せ、運転席のスペースを広めにとったもの。先にデビューした9000系と、よく似ています。しかし、1013編成の先頭車(1013号車・1312号車)は貫通扉が中央にあり、ほかの編成とはスタイルが異なります。この「仲間はずれの顔」が生まれた背景には、1013編成が最初に投入された路線と、車両運用の都合がありました。

1000系の標準的な前面スタイルの1012号車(左)と、貫通扉を中央に配置した1013号車(右)。この2両はかつて同じ編成を組み、基本的に8両編成で運用されていました
1000系の標準的な前面スタイルの1012号車(左)と、貫通扉を中央に配置した1013号車(右)。この2両はかつて同じ編成を組み、基本的に8両編成で運用されていました

1000系は1988年に登場した車両で、東横線~地下鉄日比谷線直通用の8両編成、目蒲線(目黒~多摩川~蒲田間)用の4両編成などが投入されました。ですが、東横線用8両編成の一部は、4両編成を2本連結するかたちで製造されました。東横線と目蒲線の両方を走れる車両を用意すれば、片方の路線で車両が不足したとき、柔軟に対応できると考えられたようです。

しかし、1000系は前面の貫通扉が中央からズレたスタイルのため、連結すると、乗客が移動する通路を設置できません。そのため、8両編成の中間に入る先頭車は貫通扉を中央に配置し、連結時に乗客用の通路を作れるようにしました。この「仲間はずれの顔」は、かつて編成の中間に連結されていた名残なのです。

その後、1013号車・1312号車を含む編成(1012編成)は、池上線・東急多摩川線の運用に転じます。このとき、前面貫通扉の位置が同じ車両でひとつの編成を組むよう、組成が変更されました。これにより、いままでは向き合う形で組まれていた1013号車と1312号車は、中間車を挟む背中合わせで連結されるようになり、現在に至ります。

現在、この1013編成は、池上線の旧型車両をイメージしたラッピングが施され、緑色一色の姿で運用されています。また、1000系の「仲間はずれの顔」は、この2両以外にも1011号車と1310号車が存在していました。こちらは東急を引退し、三重県の伊賀鉄道で第2の人生を送っています。

旧型車両のリバイバルカラーを施した、現在の1013編成
旧型車両のリバイバルカラーを施した、現在の1013編成
 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

登場時デザイン撮影会で

京急600形30周年にあわせた撮影会が12月に開催。600形デビュー時デザインが撮影会限定で復活。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。