2020年3月、ダイヤ改正とともに、京急線の4駅の駅名が変更されました。現在の京急東神奈川駅もそのひとつで、それまでの同駅は「仲木戸」という、まったく異なる名称でした。
改称から3年が経ち、新しい駅名もすっかり定着した感があります。しかし、ホーム周辺を探ってみると、細かいところに旧駅名の名残が見られます。
今回筆者が見つけたのは、同駅ホームをはずれてすぐの場所にある、列車情報処理システムのケース。そこには旧駅名の「仲木戸」が書かれている一方、その後ろにある架線の柱には「東神(奈川)」の文字が。改称前後の駅名の表記に、この駅の歴史が垣間見られます。
仲木戸駅の開業は、1905年。開業当初は「『中』木戸」の表記でしたが、大正時代に「『仲』木戸」に変更されました。江戸時代の周辺エリアの地名が、駅名に使われたといいます。
当時、このエリアには、将軍の宿泊施設「神奈川御殿」がありました。その周りを木製の板や門で囲い、御殿を守っていたことが、「仲木戸(中木戸)」という地名の由来になったそうです。現在の駅周辺は、江戸時代は「仲木戸横丁」と呼ばれていたのだとか。
仲木戸駅の名称変更は、京急創立120周年記念事業の一環として、沿線地域の活性化を目的に行われたもの。同駅の場合、近隣にあるJR東神奈川駅(1908年開業)との乗り換え駅として認知度、利便性を高めることが、変更の理由だったそうです。なお、これと同時に、新逗子、花月園前、産業道路の各駅についても名称が変更されています(変更後の名称はそれぞれ「逗子・葉山」、「花月総持寺」、「大師橋」)。
鉄道会社の創立120周年を機に、新たな名前でスタートを切った京急東神奈川駅。一方、江戸時代の面影を伝える昔の駅名も、その片隅に残されていました。このような名残は、京急以外の路線にもきっとあることでしょう。新たな装いの中に隠れる昔の姿を探すのも、鉄道の旅の目的として、悪くないかもしれませんね。