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小田急ロマンスカーの「特別さ」は失われたのか 「展望席つき」はついに2編成のみに

2023年12月10日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

かつての小田急ロマンスカーといえば「展望席」が代名詞でした。加えて「走る喫茶室」のようなサービスもあり、他の特急列車とは少し違う、特別な存在感がありました。

初代ロマンスカーと言われる3000形「SE」(左)と、最新型のロマンスカーである70000形「GSE」
初代ロマンスカーと言われる3000形「SE」(左)と、最新型のロマンスカーである70000形「GSE」

しかし平成に入ると、展望席つきロマンスカーは減少。2022年3月には「VSE」が定期運用を終了し、2023年12月現在、定期列車で使われる展望席つき車両は、「GSE」の2編成のみとなりました。かつての走る喫茶室のサービスも今はなく、車内販売自体が2021年に廃止されています。

他社を見回すと、近年では近鉄の「しまかぜ」、JR東日本の「サフィール踊り子」など、他の車両よりも豪華な設備を売りにしたさまざまな特急が登場しています。同じ関東私鉄で、かつて1720系「デラックスロマンスカー」を運転していた東武鉄道も、2023年には「スペーシア X」という豪華列車の運転を開始しました。

汎用特急車が増えたロマンスカーとは逆に、豪華な内装を持って生まれた東武の「スペーシア X」
汎用特急車が増えたロマンスカーとは逆に、豪華な内装を持って生まれた東武の「スペーシア X」

一方の小田急ロマンスカーでは、「GSE」を除くと、「MSE」「EXE」という、どちらかといえば普通の特急車両が主力となってしまいました。しかし筆者は、小田急の方針が間違っているとは言いません。むしろ、仕方がなかったのでしょう。

かつては観光需要を主な対象としていたロマンスカーですが、現在では通勤需要などの日常利用にも対応する必要があります。そのため、車両は汎用車的な性格が強くなり、展望席つきの「GSE」でも、「VSE」のコンパートメントのような特徴的な設備は消えています。

「リバティ」に対する「スペーシア X」のように、「VSE」以上のスペシャリティーな列車を数本だけ走らせれば……とも思いますが、これらは所要時間が2時間を超える列車。ロマンスカーの所要時間は、新宿~小田原間で大部分が1時間台と、特別なサービスを提供する時間的余裕はあまりありません。

加えて、豪華な設備を導入した車両では、通勤輸送への対応も困難です。たとえば「サフィール」用E261系では、その先代の「スーパ-ビュー踊り子」用251系と異なり、通勤輸送での使用を考慮していません。仮に同様の車両を導入するとなれば、小田急でもこの諦めが必要になります。

小田急ロマンスカーとして初めて通勤需要を意識して開発された30000形「EXE」。登場時は「ロマンスカーらしくない」との声もありましたが、筆者としては好きな車両です
小田急ロマンスカーとして初めて通勤需要を意識して開発された30000形「EXE」。登場時は「ロマンスカーらしくない」との声もありましたが、筆者としては好きな車両です

かつての小田急は、「新宿~小田原間60分(未満)」を目標に掲げており、これは2018年のダイヤ改正でようやく実現しました。しかし、この所要時間の短さが特別な列車を走らせる余裕をなくしているとすれば、皮肉なことです。

とはいえ、筆者個人としては、「EXE」も「MSE」も「GSE」も好きな車両です。小田急線沿線外の住民である筆者ですが、たまにロマンスカーを利用すると、新宿~町田間といった区間利用でさえ特別感を覚えます。これは、初代ロマンスカー以来小田急が作り上げてきたブランディング戦略が、今も成功しているから、ということではないでしょうか。

 

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