大阪と神戸を結び、姫路や奈良へ直通列車を走らせている阪神電車。同社の最大勢力を誇るのが、8000系です。1984年から1996年にかけて製造された優等列車向け(急行系)の車両で、現在は6両編成19本(114両)が在籍しています。
そんな8000系ですが、1本だけ、大阪側3両と神戸側3両で、先頭部などの車体スタイルが大きく異なる編成がいます。8523~8502の編成です。
この編成はもともと、8201編成と8223編成として別の編成を組んでいました。前者は現在の8502号車を含む編成で、8000系の量産を前に作られた車両です。車体スタイルは従来の急行系車両をベースにしており、1本の製造で終わりました。第2編成は番号が8211まで飛び、車体をフルモデルチェンジ。8223編成も、モデルチェンジ後のグループに含まれます。
しかし1995年、阪神・淡路大震災が発生し、8000系も多くの車両が被災しました。これにより、修復不能とされた一部の車両を廃車し、残った車両で編成が組み換えられました。8201編成は大阪側から1・4・5両目が、8223編成は2・3両目が残り、これらを組み合わせての運用復帰が決まります。その手順は以下のとおりです。
- 8201編成の大阪側先頭車(8201号車)を方向転換。神戸側の先頭車とし、同編成由来の3両を神戸側に固める。
- 8223編成の残った2両を、元8201編成の大阪側に連結。
- 欠けている大阪側の先頭車両を新造し、連結。
震災の影響で新造、改造された車両は「元の車番+300」という付番法則が設けられ、大阪側の先頭車は8523号車、神戸側の先頭車は8502号車となりました。こうして、同じ編成ながら車体スタイルが違う車両が誕生したのです。2007年にはリニューアル工事を受け、塗装もクリーム+赤からオレンジ+ベージュに改められました。
この8523編成、1998年に設定された直通特急(山陽姫路駅への直通)の運用からは、長らく外されていました。2020年にようやく解禁され、現在は姫路方面へも乗り入れています。
震災の悲劇を乗り越え、新たな相棒と組んで約30年。阪神のちょっと異色な「チグハグ電車」は今日も、独特な出で立ちで沿線を駆け回っています。