鉄道コム

鉄道コらム

同じ編成なのに、前後で顔が違う!? 震災で生まれた阪神の「チグハグ電車」8523編成

2023年7月16日(日) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

大阪と神戸を結び、姫路や奈良へ直通列車を走らせている阪神電車。同社の最大勢力を誇るのが、8000系です。1984年から1996年にかけて製造された優等列車向け(急行系)の車両で、現在は6両編成19本(114両)が在籍しています。

そんな8000系ですが、1本だけ、大阪側3両と神戸側3両で、先頭部などの車体スタイルが大きく異なる編成がいます。8523~8502の編成です。

阪神の8523号車(左)と8502号車(右)。そのスタイルはまったく異なりますが、この2両は30年近く、同じ編成を組んでいます
阪神の8523号車(左)と8502号車(右)。そのスタイルはまったく異なりますが、この2両は30年近く、同じ編成を組んでいます

この編成はもともと、8201編成と8223編成として別の編成を組んでいました。前者は現在の8502号車を含む編成で、8000系の量産を前に作られた車両です。車体スタイルは従来の急行系車両をベースにしており、1本の製造で終わりました。第2編成は番号が8211まで飛び、車体をフルモデルチェンジ。8223編成も、モデルチェンジ後のグループに含まれます。

しかし1995年、阪神・淡路大震災が発生し、8000系も多くの車両が被災しました。これにより、修復不能とされた一部の車両を廃車し、残った車両で編成が組み換えられました。8201編成は大阪側から1・4・5両目が、8223編成は2・3両目が残り、これらを組み合わせての運用復帰が決まります。その手順は以下のとおりです。

  • 8201編成の大阪側先頭車(8201号車)を方向転換。神戸側の先頭車とし、同編成由来の3両を神戸側に固める。
  • 8223編成の残った2両を、元8201編成の大阪側に連結。
  • 欠けている大阪側の先頭車両を新造し、連結。

震災の影響で新造、改造された車両は「元の車番+300」という付番法則が設けられ、大阪側の先頭車は8523号車、神戸側の先頭車は8502号車となりました。こうして、同じ編成ながら車体スタイルが違う車両が誕生したのです。2007年にはリニューアル工事を受け、塗装もクリーム+赤からオレンジ+ベージュに改められました。

リニューアル後の8523編成(8502号車側から撮影)。左手前の3両と右奥の3両で、屋根上の冷房装置、屋根の高さ、窓の形などが違うことがわかります
リニューアル後の8523編成(8502号車側から撮影)。左手前の3両と右奥の3両で、屋根上の冷房装置、屋根の高さ、窓の形などが違うことがわかります

この8523編成、1998年に設定された直通特急(山陽姫路駅への直通)の運用からは、長らく外されていました。2020年にようやく解禁され、現在は姫路方面へも乗り入れています。

震災の悲劇を乗り越え、新たな相棒と組んで約30年。阪神のちょっと異色な「チグハグ電車」は今日も、独特な出で立ちで沿線を駆け回っています。

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

ラストランは2月10日

「青胴車」5001形は2月10日にラストラン。引退前の「乗車会」開催や、引退記念グッズ発売も。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

「サステナ車両」5月デビュー

元小田急の西武8000系が、車両基地を出場。デビューは2024年度末から2025年5月末に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、標準~望遠・超望遠レンズ編です。

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。