一日に多くの航空機が発着する巨大空港では、空港内の移動のために、搭乗者用の新交通システムが整備されていることがあります。たとえば、アメリカのワシントン・ダレス国際空港では三菱製の「エアロトレイン」、フランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港ではシーメンス製の「CDGVAL」が運行中。日本でも、関西国際空港の制限エリアでは、航空機搭乗者しか利用できない「ウイングシャトル」が運行されています。
日本では他にも、かつては成田空港の第2旅客ターミナルで、搭乗者専用のユニークな乗り物が運行されていました。
「シャトルシステム」と呼ばれていたこの乗り物は、第2ターミナルの本館とサテライトを結ぶ役目がありました。車両の見た目は「ゆりかもめ」などの新交通システム(AGT)に似ているのですが、仕組みはまったく別物。車両は空気の力で浮上しており、動力源はロープ。ケーブルカーのように、地上側に動力機械があり、これによって車両が制御されていました。
この乗り物を開発したのは、エレベーターメーカーで知られるオーチス。成田空港以外にも、国外では導入例がありました。日本においては、見た目は鉄道の仲間のようですが、法律上は鉄道扱いとはならず、施設内のエレベーターという扱いに。そのため、車内にはエレベーター用の検査済証が掲出されていました。
日本唯一のユニークな乗り物だったシャトルシステムですが、2013年にターミナルの本館とサテライトを結ぶ動く歩道が完成したことで、お役御免に。乗り物がなくなったという点では残念なのですが、シャトルシステムでは乗車するための待ち時間が発生していたため、動く歩道の供用開始により、利便性は向上しました。役目を終えたシャトルシステムの車両は、今も2両が、成田空港近くの施設で保存されています。