鉄道コム

鉄道コらム

駅ホームのベンチ、向きを変えたのはなぜ? ホームドアだけじゃない、駅の転落事故対策【これで君も鉄道はかせ!】

2024年5月5日(祝) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

駅のホームで列車が来るまで、ベンチに座って待つこともあるでしょう。ホームのベンチといえば、かつては線路に向かうように設置され、到着した列車に一直線で乗れるようになっていることが一般的でした。が、最近はその当たり前が変わりつつあり、列車の進行方向またはその逆向きに設置されているものも増えています。

見かける機会が増えた、向きを変えた駅ホームのベンチ
見かける機会が増えた、向きを変えた駅ホームのベンチ

ベンチの向きの変更は、2015年頃から、まず関西地区で広まりました。その理由は、乗客が線路に落ち、人身事故につながることを防ぐため。とくに「酔っ払い」の事故を減らすことを意識しているようです。

駅のホームで起こった人身傷害事故の数は、2000年代初頭からの約10年間で大きく増えており、その半分以上が酒に酔った乗客によるものだったとか。また、JR西日本と大阪市交通局(現在の大阪メトロ)が調べた結果、酔っ払いは「ベンチから立ち上がった後、まっすぐ前に進みがちである」ことがわかりました。さらに、線路に落ちる事故は、ホームの端ギリギリを歩いて足を踏み外すより、列車の到着に気づかぬまま線路の方向に歩いて落ちるケースの方が多いのだそうです。

そこで考えられた対策が、ベンチの向きを変えることでした。こうすれば、人がまっすぐ進んでも、列車が走る場所に落ちる危険は少なくなります。事故をゼロにはできずとも、「数を減らす」点では、効果が確認できているそうです。また、駅によっては、線路に背中を向けるようにベンチを置くなど、違う方法で対策をしていることもあります。

向きを変えたベンチからの視線のイメージ。たしかに、列車が走る場所に直接落ちる危険は少なくなりそうです
向きを変えたベンチからの視線のイメージ。たしかに、列車が走る場所に直接落ちる危険は少なくなりそうです

転落事故を防ぐことは、その人の命を守るだけでなく、列車を使う多くの人を時間通りに運ぶうえでも大切なことです。最近は都市部を中心にホームドアが設置された駅も多くなりましたが、対策はそれだけではないのです。

みなさんは、駅で「ちょっとした変化」に気づいたことはありますか?その変化、じつは事故を防ぐための、大切な取り組みかもしれません。

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

新型新幹線「E10系」開発発表

次期東北新幹線車両として開発。2027年秋以降に落成し、2030年度内に営業運転を開始。

画像

荷物輸送専用の新幹線

荷物輸送サービス「はこビュン」の専用車両。E3系を改造し、2025年秋に投入予定。

画像

「元新京成車」扱いどうなる?

4月1日の京成電鉄と新京成電鉄の合併後、元新京成車はどうなる? 京成に取材しました。その将来の分析も。

画像

80000系で崩れた「伝統」とは

東武鉄道の80000系では、同社一般車のある「伝統」が崩れました。その理由とは?

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

3月の鉄道イベント一覧

ダイヤ改正の3月到来。鉄道旅行や撮影の計画は、鉄道コムのイベント情報で。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。