JR線や東急線などとの直通運転を実施している相模鉄道では、JR直通用に12000系、東急線直通用に20000系・21000系という、新しい車両を使用しています。「ヨコハマネイビーブルー」を身にまとい、車内もグレー基調のデザインでまとめられているこれらの車両ですが、一部の座席には「座りにくい」と思えるものが。しかしそこには、車両メーカーによる仕掛けが盛り込まれていました。
車端部のこの座席は、「ユニバーサルデザインシート」というもの。通常の座席よりも座面の高さを上げ、前後幅を小さくしています。他の座席より座りにくい印象を受けるのですが、この形状により「浅く座る」ことになるのがポイント。立つ、座るという動作の負担が減るため、高齢者や腰を痛めた利用者に優しい座席となっているのです。
ユニバーサルデザインシートは、車両メーカーである日立製作所と、プロダクトデザイナーの川上元美さん(川上デザインルーム代表)が共同で開発したもの。2014年に発表され、2017年にはグッドデザイン賞を受賞しました。現在では相鉄のほか、つくばエクスプレスのTX-3000系でも使われています。
このユニバーサルデザインシートではありませんが、同じようなコンセプトの座席として、阪神では「ちょい乗りシート」を導入しています。2015年にデビューした各駅停車用の5700系に採用されたもので、短距離利用者が多いという路線・車両の特徴から、この座席の導入に至ったといいます。
相鉄のユニバーサルデザインシートと同様、鉄道車両メーカーが開発した座席が、三菱重工業による「G-Fit」。主に新交通システム(AGT)車両に使われている座席です。この座席は、臀部を背もたれから離して座ると、座りにくさを覚えるもの。しかし、深くしっかりと腰掛けると、自然と体が座席にフィットする構造となっています。
G-Fitは、背もたれを傾斜させることで上体の保持性能を従来型座席より高めたほか、座面前面の高さを上げることで、利用者が自然にかかとを引いて座るような設計としました。AGTでは一般の鉄道よりも車体幅が狭いことが多いのですが、利用者が足を投げ出しにくい座席を採用することで、立席利用者の快適性向上も狙っているのです。
このG-Fitは、2014年にデビューしたゆりかもめ7300系で初採用。以降、同社の7500系のほか、日暮里・舎人ライナーの330形、ニューシャトルの2020系など、三菱重工業が製造したAGT車両でも採用されています。