「相鉄」こと相模鉄道のかしわ台駅。車両基地を併設しており、列車の運用拠点のひとつとなっています。この駅には、「ホームまで異様に距離のある改札口をもつ」という特徴があります。
かしわ台駅の改札口は、西口と東口の2か所。西口はホームのすぐ上に駅舎があり、利用上の不便はありません。問題は東口のほう。ログハウスのような内装の駅舎に入り、改札を通ると、頭上にはホームへの案内板が見えてきます。そこ記載されたホームまでの距離は、なんと「約340メートル」!
案内板を過ぎると、線路沿いに設けられた通路(屋根つき)が延々と続きます。途中には駅事務室への連絡用インターホンが複数あり、その距離の長さを感じさせられます。通路の終端部には日本庭園を模した休憩所があり、その奥に見える跨線橋が、ホームにつながっているのです。改札口からホームまで、急ぎめで歩いても3分程度はかかるでしょうか。
なぜ、このような長い通路があるのか。それは、かつて東口付近に駅が設置されていたことが理由のようです。
1946年3月、相模大塚~海老名間に柏ヶ谷駅が開業します。翌4月、大塚本町駅に名称を改めて営業を続けてきました。
しかし、時間とともに駅の老朽化が進みます。とはいえ、立地面で改良が難しいという事情もあり、相鉄はある決断をくだします。それが、「大塚本町駅を廃止し、その前後に2つの駅を新たにつくる」というもの。1975年、さがみ野駅とかしわ台駅が開業。大塚本町駅は、さがみ野駅に移転・駅名変更というかたちで廃止となりました。
ですが、大塚本町駅は完全に死に絶えたわけではありませんでした。駅舎は比較的近いかしわ台駅と通路を介して結ばれ、同駅の東口に生まれ変わったのです。旧駅と新駅をつないだ結果、異様に長い通路ができたといえます。
この通路を作ってでも東口を残した理由は、かしわ台駅周辺の地図を見ると、なんとなく想像がつきます。東口から一般道を使って西口方面へ行く場合、大きく迂回しなければいけないことがわかります。大塚本町駅の廃止による利便性の低下を最小限にとどめるべく、かしわ台駅へ最短距離でアクセスできる道を確保したと考えられます。
改良しづらい駅の老朽化対策と、利便性確保の両立。あの長い通路には、駅の利用者に対する相鉄のやさしさが込められているのかもしれません。