関西圏と東北・北海道方面を結ぶ、通称「日本海縦貫線」(北陸本線(第三セクターへ移管された区間を含む)、羽越本線など)では、近畿地方と北陸、信越、東北地方、そして青函トンネルを超えて北海道を結ぶ貨物列車が、日夜運転されています。その先頭に立つのは、JR貨物のEF510形電気機関車。国鉄時代に製造された車両を置き換えるため、2001年に登場した車両です。
ところでこのEF510形、赤色の車両と、青色の車両、そして銀色の車両の、3つの色が存在します。なぜカラーリングが複数あるのでしょうか。
赤色の車両は、当初からJR貨物で活躍する0番台。一方、青色と銀色(日本海縦貫線で活躍する車両のみ)は、もとはJR東日本が導入した500番台です。500番台の製造目的は、寝台特急「北斗星」「カシオペア」のけん引用。老朽化したEF81形を置き換えるため、2009年から2010年にかけて、15両が製造されました。カラーリングは、「北斗星」カラーの青色と、「カシオペア」カラーの銀色の2種類。いずれも側面に流星を描いていました。
JR東日本のEF510形は、2010年に特急列車のけん引を開始。当時はJR東日本が受託していた貨物列車の運用もあり、旅客列車用に製造された機関車が貨物列車をけん引する姿が見られました。この運用開始により、EF510形はEF81形の定期運用を置き換えた……はずでした。
しかし、2013年には貨物列車の受託が終了し、EF510形は早くも一部が余剰に。これらはJR貨物に売却され、貨物けん引用機関車に役割を改めました。さらに2015年の「北斗星」廃止、2016年の「カシオペア」定期運用終了によって、JR東日本のEF510形は定期運用を喪失。最終的に、全15機がJR貨物に譲渡されたのです。同形式の導入時点で、北海道新幹線開業時の寝台特急廃止は想定されていたはずで、EF510形の売却も、当初から織り込み済みだったと考えられます。
そうしてJR貨物に譲渡された元JR東日本の車両は、側面の流星マークは撤去されたものの、青や銀といったベースの色はそのままに、JR貨物仕様に改修されました。現在では、生え抜き車も譲渡車も区別なく運用に就いており、JR東日本時代には入線することのなかった中京圏や関西圏にも、日常的に乗り入れています。カラーバリエーション豊かなEF510形ですが、複数の塗装があると管理上のコストが掛かります。今後の大規模検査などで塗装が塗り直される際、500番台の独自塗装は消滅してしまうかもしれません。
ちなみに、2023年にはもう一つの「銀色のEF510形」として、300番台がデビューしています。こちらは主に九州で活躍するグループで、車両の色は「銀釜」ことEF81形300番台をイメージしたもの。今後、EF81形、ED76形の置き換えのため、導入が進められます。