阪急京都線の特急を中心に運用される、クロスシート車両の9300系。2003年10月14日にデビューし、今秋で20周年の節目を迎えます。
かつて、京都線の特急にはクロスシート車両の6300系が、ほぼ専用で充当されていました。しかし、2001年のダイヤ改正以降は、ロングシートの他形式も特急運用に入る機会が多くなります。これは、特急の本数が増え、6300系の車両数(全9本)では対応しきれなくなったため。9300系が製造されたひとつの目的は、京都線特急の運用を極力クロスシート車両で統一することでした。
外観は、「マルーン単色に屋根部分がアイボリー」という阪急標準のデザインをベースとしつつ、新たに立体感をもたせたものが社内でデザインされました。前面部分には傾斜がつき、屋根部分にはカバーが入ったことで、ボリューミーな独特のスタイルとなりました。2007年には、神戸・宝塚線向けの9000系が、同じスタイルで登場しています。
9300系と従来の特急車両との大きな違いは、扉の数。6300系までは1両あたり2扉が主流でしたが、9300系は3扉が採用されました。3扉となった理由のひとつは、1997年以降の特急停車駅増加につれて長くなる傾向にあった乗降時間を、少しでも短くすること。計画時には2扉で製造する案もあったものの、3扉の方が乗降時間の短縮には有利と判断されたのです。
2005年までに8両編成3本が製造された9300系は、おもにロングシート車が入っていた特急運用に充当。この時点では、基本的に6300系と運用が分けられていました。しかし2008年以降、9300系による6300系の置き換えが始まり、2010年2月に完了しました。現在は11本が在籍していますが、増備途中でヘッドライトの形状や行先表示の方式を改めるなどの変化があり、細かい相違点が複数見られます。
2023年10月、阪急は、京都線特急向けの新型車両2300系の導入を発表しました。9300系の後継車両ということになりますが、阪急電鉄の広報担当によると、これによる9300系の処遇は、現時点で未定といいます。ハタチを迎えた9300系は、今後どんな人生を歩むのか。今後の動きが注目されます。