博多駅と鹿児島中央駅を結ぶ九州新幹線では、「みずほ」「さくら」「つばめ」の3つの列車が運転されています。いずれも国鉄時代に登場した伝統ある列車名で、「つばめ」は2004年の新八代~鹿児島中央間部分開業時、「みずほ」「さくら」は2011年の全線開業時に新幹線列車として運転を開始しました。
山陽・九州新幹線の直通列車としては最上位の「みずほ」ですが、列車の名称が発表された際、一部からは批判の声が上がっていました。かつての「みずほ」は、「さくら」「つばめ」よりも存在感が薄い、「地味」だという印象を持つ列車だったためでした。
1994年に廃止されたかつての「みずほ」は、廃止時点では東京~熊本間を走る寝台特急列車でした。東京~九州間の寝台特急では、「富士」「はやぶさ」「さくら」が主力格として運転されており、「みずほ」はこれら列車を補完するような立場でした。
これが一転、「みずほ」という名称は、九州新幹線の最速達列車として、「さくら」よりも上位の列車となりました。名称が発表された当時は、「格が劣る」といった鉄道ファンらの批判のほか、寝台特急時代は熊本駅止まりだったことがあり、鹿児島県知事からも否定的なコメントが出されたほどでした。「さくら」は公募で名称が決まった一方、「みずほ」はJR九州の社内で決められた名称であることも、批判的な思いを抱く材料となったようです。
とはいえ、九州新幹線全線開業から10年以上が経過した今、本数が多い「さくら」の存在感はある一方、「最速達新幹線『みずほ』」という立ち位置も、利用者には定着してきたのではないでしょうか。
「みずほ」(瑞穂)という名称は、「みずみずしい稲の穂」を表しており、実り豊かな国、日本を意味する「瑞穂の国」にも通じるものです。さらに、同じ区間を走る「さくら」は、日本を代表する花である桜が由来。伝統やかつての格を考えなければ、この組み合わせは実に自然な気がしてきます。