2024年3月16日を予定する北陸新幹線金沢~敦賀間延伸開業にあわせ、北陸エリアの在来線特急は再編されることとなります。これまで関西・中京圏と北陸エリアを結ぶ役目を担ってきた「サンダーバード」「しらさぎ」は、運転区間を短縮。「ダイナスター」や「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」は、新幹線に役目を譲り廃止されます。
一方、北陸エリアで唯一増強されるのが、七尾線特急の「能登かがり火」。これまでの4往復から5往復へと、本数が増える予定。といっても、運転区間を短縮する「サンダーバード」1往復分を「能登かがり火」に変更するということで、七尾線特急の本数自体は変化はありません。この列車は、新幹線開業後も北陸エリア(敦賀近辺を除く)を走る、唯一の在来線定期特急となる予定です。
「能登かがり火」が走る金沢~和倉温泉間は、金沢~津幡間のIRいしかわ鉄道線が交流電化、津幡~和倉温泉間の七尾線が直流電化です。このため、七尾線を走行できる車両は、交直流車両かディーゼルカーに限られます。同列車で現在使われている車両は、681系と683系。新幹線開業後も、どちらかの形式が引き続き運用されると考えられます。
新幹線延伸後、「能登かがり火」に使用する編成は、どの程度必要となるのでしょうか。JR西日本に問い合わせたところ、「現在検討中でお答えできない」ということで、独自に推察してみました。
現在の七尾線特急のダイヤを、ダイヤグラム作成ソフト「OuDia」で書き起こしてみると、将来「能登かがり火」完結の運用を組む場合、少なくとも3編成が必要となるよう。車両の検査などを考えると、追加で最低1本の予備も必要で、必要な編成数は4本となります。一方、現在のダイヤでは和倉温泉駅で2本が停泊する運用となっています。ダイヤに手を加え、運用を変更できれば、所要本数を1本減らすことも可能と考えられます。
2015年の北陸新幹線金沢開業時には、余剰となった683系の一部が、直流専用車両である289系へと改造されました。2024年の新幹線延伸後、「サンダーバード」「しらさぎ」は交流電化区間を走行しなくなるため、交流用機器は不要になります。JR東日本の651系が、常磐線から高崎線へ転用された際に交流機器の使用を停止したように、今残る681系・683系も、使用しない交流機器を使用停止あるいは撤去し、289系に改造されることも考えられます。
仮にこのようになれば、JR西日本の交直流特急電車は、「能登かがり火」用の3本あるいは4本のみという、少数派の存在となりそう。かつて「雷鳥」や「白鳥」「白山」などで使用する交直流特急電車を多数保有していたJR西日本ですが、683系が最後に製造された同社交直流特急電車となるのかもしれません。