東海道新幹線の途中駅の中で、熱海駅だけにないものとは? 答えは一つではないかもしれませんが、今回ご紹介するのは、熱海駅だけに無い「待避線」です。
待避線は、文字通り、列車を待避するための線路のこと。東海道新幹線では、最小3分間隔で「のぞみ」が運転されており、各駅停車の「こだま」は各駅で待避線に「逃げ込む」ようなダイヤとなっています。
最高時速285キロで運転されている東海道新幹線では、停車するために速度を落とし、そして駅を発車し加速すると、高速で走り続ける列車と比較すると大きなタイムロスが生まれます。そのため「こだま」は、待避線を持つ多くの駅で後続の「のぞみ」「ひかり」をやり過ごし、また次の駅の待避線へ逃げ込む、というようなダイヤが組まれているのです。
しかし熱海駅では、この待避線がないため、「こだま」が逃げ込むことができません。そのため、熱海駅周辺では「こだま」に後続列車が追い付きやすく、ダイヤ編成上のネックとなっているといいます。
熱海駅に待避線が作られなかったのは、その地形のため。駅の裏側に山が迫り、線路自体も急カーブを描いている場所に駅を設置したため、待避線のためのスペースが設けられなかったのだそう。待避線とは別ですが、このカーブ自体も曲者で、その曲線半径は1500メートル。熱海駅を通過する列車であっても、駅近辺では速度を落とす必要があり、こちらもダイヤ編成上のネックとなっています。
なお、東海道新幹線と直通している山陽新幹線でも、新神戸駅が同じような待避線のないカーブ駅となっています。しかしこちらは、東海道新幹線ほど列車本数が多くないことに加え、現在は全列車が停車する駅となっているため、熱海駅ほどの問題とはなっていないようです。
さて、熱海駅にだけないものは待避線でしたが、かつては熱海駅だけで見られる設備もありました。それはホームドア。待避線がないホームを列車が高速で通過する熱海駅では、安全性確保のため、1974年、東海道新幹線ではじめてホームドアが設置されました。現在のものは2011年以降に設置された2代目ですが、現時点でも「のぞみ」停車駅ではない駅への設置は、同駅が唯一となっています。