鉄道コム

鉄道コらム

2年間の眠りから覚めた東武9000型の異端児、「車両の墓場」へ向かう 9101編成、いよいよ引退か

2023年10月22日(日) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

10月17日、東武鉄道9000型のトップナンバー・9101編成が、旧北館林荷扱所へと回送されました。ここは、東武などの車両が廃車・解体される際に使われる、「車両の墓場」とも呼べる場所。9101編成も、いよいよ最期を迎えるのでしょうか。

引退した東武9000型9101編成。ここ数年は一切運用に入らず、車両基地内に留置されていました
引退した東武9000型9101編成。ここ数年は一切運用に入らず、車両基地内に留置されていました

9000型は、東武鉄道初のステンレス車両。営団地下鉄(現:東京メトロ)有楽町線への直通対応車両として、東上線に投入されました。その第一陣が、1981年に試作された9101編成です。当時は有楽町線が和光市駅(東上線との結節点)まで延伸されていなかったなどの理由もあり、9101編成はひとまず、他車と同様に東上線内の運用で使用されることになりました。

1987年、有楽町線和光市駅延伸開業とともに、9101編成も同線への直通運用が始まります。また、この延伸開業を前に、9000型の本格的な量産が始まりました。しかし、この量産車両は、扉の位置を9101編成のそれから変えるなど、新たな仕様で落成。結果的に9101編成は、独特の形態をもつ「異端児」になってしまいました。

2008年には東京メトロ副都心線が開業し、東上線はそちらへも乗り入れることになります。が、直通対応形式のうち9101編成だけは、副都心線直通の運用から外されました。その理由は、各駅に設置されたホームドア。ほかの車両と異なる9101編成の扉の位置は、ホームドアの開口部と合わなかったのです。その後も有楽町線に入ることは稀にあったようですが、同線にもホームドア整備が進んだことで、2010年には地下鉄直通運用から完全に撤退。また、量産車両が2007年以降に受けたリニューアル工事は、9101編成には実施されず、原型に近い姿をとどめることになりました。

リニューアルを受けた9000型量産車両。こちらは引き続き運用に入っています
リニューアルを受けた9000型量産車両。こちらは引き続き運用に入っています

長らく東上線を走ってきた9101編成でしたが、2021年夏頃に不具合を起こし、運用を外れました。同年冬には「9000型就役40周年記念乗車券」が発売されるも、肝心の40周年を迎えた車両は、営業線上に出てくることはありませんでした。2023年9月には車庫内を動く姿などが目撃され、ようやく長い沈黙を破ったかに思われたものの、営業運転には復帰せず、北館林へと向かいました。

9000型のなかでも異色の経歴をたどった9101編成。他車より冷遇される傾向にあったのは、試作車両ゆえの宿命なのでしょうか。リニューアルされたの量産車両は引き続き運用中ですが、いまやこれらも、東上線では古参の部類。9101編成の分まで、長く運用されることを願いたいものです。

 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

登場時デザイン撮影会で

京急600形30周年にあわせた撮影会が12月に開催。600形デビュー時デザインが撮影会限定で復活。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。