10月17日、東武鉄道9000型のトップナンバー・9101編成が、旧北館林荷扱所へと回送されました。ここは、東武などの車両が廃車・解体される際に使われる、「車両の墓場」とも呼べる場所。9101編成も、いよいよ最期を迎えるのでしょうか。
9000型は、東武鉄道初のステンレス車両。営団地下鉄(現:東京メトロ)有楽町線への直通対応車両として、東上線に投入されました。その第一陣が、1981年に試作された9101編成です。当時は有楽町線が和光市駅(東上線との結節点)まで延伸されていなかったなどの理由もあり、9101編成はひとまず、他車と同様に東上線内の運用で使用されることになりました。
1987年、有楽町線和光市駅延伸開業とともに、9101編成も同線への直通運用が始まります。また、この延伸開業を前に、9000型の本格的な量産が始まりました。しかし、この量産車両は、扉の位置を9101編成のそれから変えるなど、新たな仕様で落成。結果的に9101編成は、独特の形態をもつ「異端児」になってしまいました。
2008年には東京メトロ副都心線が開業し、東上線はそちらへも乗り入れることになります。が、直通対応形式のうち9101編成だけは、副都心線直通の運用から外されました。その理由は、各駅に設置されたホームドア。ほかの車両と異なる9101編成の扉の位置は、ホームドアの開口部と合わなかったのです。その後も有楽町線に入ることは稀にあったようですが、同線にもホームドア整備が進んだことで、2010年には地下鉄直通運用から完全に撤退。また、量産車両が2007年以降に受けたリニューアル工事は、9101編成には実施されず、原型に近い姿をとどめることになりました。
長らく東上線を走ってきた9101編成でしたが、2021年夏頃に不具合を起こし、運用を外れました。同年冬には「9000型就役40周年記念乗車券」が発売されるも、肝心の40周年を迎えた車両は、営業線上に出てくることはありませんでした。2023年9月には車庫内を動く姿などが目撃され、ようやく長い沈黙を破ったかに思われたものの、営業運転には復帰せず、北館林へと向かいました。
9000型のなかでも異色の経歴をたどった9101編成。他車より冷遇される傾向にあったのは、試作車両ゆえの宿命なのでしょうか。リニューアルされたの量産車両は引き続き運用中ですが、いまやこれらも、東上線では古参の部類。9101編成の分まで、長く運用されることを願いたいものです。