京都市の北部にある鞍馬寺は、770年に建立されたと伝わる歴史あるお寺。かの源義経が幼少時代に預けられていたことでも知られています。そんな鞍馬寺ですが、実は「鉄道事業者」の一つに数えられています。
鞍馬寺が運行しているのは、鞍馬山鋼索鉄道というケーブルカー。山門駅と多宝塔駅を結ぶ、約0.2キロの短い路線です。一見すると、テーマパークや旅館敷地内などの(法律上の)鉄道ではない移動手段のように思えます。しかしこのケーブルカーは、鉄道事業法に基づく路線として国土交通省監修の「鉄道要覧」にも掲載されている、立派な「鉄道路線」の一つなのです。
このケーブルカーの特徴は、運賃が無料であること。ただし、駅には券売機が置かれており、大人200円、子ども100円をこちらで寄付する必要があります。ケーブルカーは、鞍馬寺へ寄付した参拝者に対するお礼として運行されている、ということになります。
少しマニアックな目線で見ると、このケーブルカーは金属製の車輪ではなく、ゴムタイヤを使用しています。また、国内のほとんどのケーブルカーは、走行車両を2両とし、ケーブルの両端に繋いでバランスを取る仕組みとなっているのですが、鞍馬寺のケーブルカーは車両が1両のみ。その代わり、軌道下を通る「おもり」を設置し、バランスを取っています。いずれも、ケーブルカーでは日本唯一のシステムです。
なかなかにユニークな乗り物である鞍馬山鋼索鉄道ですが、当の鞍馬寺側では、ケーブルカーの利用を積極的に勧めてはいません。というのも、参道を自ら歩くことで、鞍馬の自然を体感してほしいという、鞍馬寺の思いがあるため。参道は急な坂道であるため、健常者でも息を切らせながら登るような場所ではありますが、比較的楽な下りでは、自分の足で歩いてみるのもいいのではないでしょうか。