物価が上昇傾向にある昨今。鉄道路線の運賃も、設備投資や電力費の高騰などを理由に、各社から値上げ表明が相次いでいます。そんな鉄道運賃ですが、日本で最も安いのは、どこの路線なのでしょうか。
2024年7月現在、日本で運賃が事実上最も安いのは、小田急箱根が運行する箱根登山ケーブルカー(強羅~早雲山間)です。このケーブルカーには全部で6つの駅がありますが、1駅間の乗車時、つまり初乗り運賃は、大人90円(以下、特記なき場合は大人の価格)。現時点では日本で唯一、大人普通運賃が100円を切る路線となっています。
2番目に安い路線はというと、江坂~箕面萱野間を走る北大阪急行南北線。このうち江坂~千里中央間では、初乗り運賃は100円と設定されています。1974年の開業時は、初乗り運賃は国鉄と同額の30円でしたが、同年に開催された大阪万博の来場者輸送の収入で多くの利益を得たことなどから、その後も比較的低廉な運賃設定が続いてきました。なお、2024年3月に延伸開業した千里中央~箕面萱野間では、普通運賃では一律60円の「加算運賃」が設定されているため、初乗り運賃は160円となっています。
鳥取県を走る若桜鉄道の郡家~八頭高前間も、普通運賃が100円となっている区間です。この区間の運賃は、高校生の利用増を目指して格安に設定されたもの。1997年から2007年までの10年間は、さらに安い60円という設定で、当時は北大阪急行を抜いて日本一の安さとなっていました。
小倉の北九州高速鉄道(北九州モノレール)では、本来の初乗り運賃は180円ですが、初乗り区間では企画乗車券扱いで100円できっぷを発売。こちらも、事実上は北大阪急行や若桜鉄道と並ぶ2位タイとなっています。
なお、箱根登山ケーブルカーは「事実上最も安い」とご紹介しましたが、正確にはさらに運賃が安い路線があります。鞍馬寺が運行するケーブルカー、鞍馬山鋼索鉄道がそれで、運賃はなんと0円。ただし、寺に200円を寄付した参拝者に対し、お礼としてケーブルカーの乗車を提供しているという形式となっているので、事実上は運賃が200円という路線です。
ところで、近年は運賃の値上げ傾向がみられる一方で、中には子育て世代の負担軽減や利用促進などを目的に、小児運賃を値下げした会社もあります。2022年3月には、小田急が小児IC運賃を全線一律で50円に変更。京急も、2023年10月に小児IC運賃を全線一律75円(加算運賃は除く)に変更しました。特に小田急のものは、箱根登山ケーブルカーや北大阪急行などと並び、小児運賃では国内最安値となっています。