鉄道コム

鉄道コらム

筑肥線の103系、導入時点でも「型落ち」だった それでもあえて新造されたワケ

2023年11月26日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

玄界灘沿いを走り、福岡県と佐賀県を結ぶ筑肥線は、1983年に福岡市営地下鉄との直通運転が始まり、あわせて姪浜~唐津(~唐津線西唐津)間が電化されました。この際、福岡市営地下鉄側では、1981年の地下鉄開業にあわせて導入された1000系が用意されましたが、筑肥線側の事業者である当時の国鉄では、103系を新造し投入しました。

筑肥線用の103系1500番台
筑肥線用の103系1500番台

103系は、国鉄の旅客用車両では最多製造数をほこる、国鉄通勤型電車の決定版といえる形式です。しかし、その試作車が登場したのは1963年で、量産車のデビューも1964年。1983年当時は新型の201系が営業運転に就いており、さらに営団地下鉄(現:東京メトロ)千代田線直通用の省エネ電車、203系も開発されていました。つまり103系は、当時すでに「型落ち」といえる状態でした。

国鉄では、地下鉄東西線および千代田線への直通用に、103系1000番台・1200番台を投入していました。しかし千代田線では、抵抗制御を採用した103系からの排熱が問題に。特に千代田線では、営団側はチョッパ制御車の6000系を投入しており、こちらは103系のような課題はありませんでした。また、103系と6000系では、省エネ性能の違いによる電気代の差も懸案事項となっていました。これを解決するため、国鉄は201系を基にした203系を開発し、103系を千代田線直通用から順次置き換えていきました。

一方の筑肥線では、駅間距離が長いこと、特に唐津側では列車本数が少ないことから、203系を投入しても大きな省エネ効果が得られません。そのため、「型落ち」形式ではありますが、経済性に勝る103系を新造したのです。

とはいえ、筑肥線用の103系1500番台は、新型車両の設計も一部で取り入れたつくりで製造されました。台車や制御装置などの走行機器類は従来の103系と同じですが、車体設計は201系をベースとしたものに。加えて、前面デザインは従来の地下鉄直通用103系から大きく変更され、105系のような見た目となりました。

筑肥線用の103系は、2015年以降の305系の投入によって、地下鉄直通からは撤退。現在は、筑前前原~西唐津間で、3両編成が運用されています。8月には、デビュー当時の塗装を再現した編成が登場。デビュー40周年を迎えた今も、活躍が続いています。

デビュー時の塗装をまとう103系(画像:JR九州)
デビュー時の塗装をまとう103系(画像:JR九州)
 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

登場時デザイン撮影会で

京急600形30周年にあわせた撮影会が12月に開催。600形デビュー時デザインが撮影会限定で復活。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。