鉄道コム

鉄道コらム

営業運転に就かずに引退! でも「小さな地下鉄」の立役者な、公園に眠る保存車両

2024年1月10日(水) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

都営地下鉄の大江戸線では、最新型車両の12-600形と、1991年の路線開業時から使われている12-000形の2形式が使われています。特に12-000形は、開業時から使われているとはいっても、当初投入された車両と、1997年以降に投入された車両では、そのデザインが大きく異なります。

さらに、この12-000形では、路線開業よりさらに前の1986年に製造された、デザインが全く異なる「試作車」が存在しました。

12-000形の試作車
12-000形の試作車

12-000形の試作車が製造されたのは、「ミニ地下鉄」の技術検証が目的でした。大江戸線(2000年までは「12号線」)は、トンネルの小径化による建設費用の削減を目指し、従来の地下鉄よりも小さな車体を採用することが検討されていました。大江戸線の計画当時、このミニ地下鉄用の小さな地下鉄車両は国内で例がなく、これを実証するために、1986年に試作車2両編成1本が製造されたのです。落成時点で、大江戸線の線路は建設中だったため、試作車は浅草線の馬込車両基地に搬入され、ここで走行試験を実施していました。

また、現在の大江戸線では、走行用モーターに一般的なしくみ(いわゆる「回転式」)ではなく、「リニアモーター」が用いられています。しかし、製造当時の試作車は、回転式のモーターを搭載して登場。大江戸線におけるリニアモーターの採用検討は試作車の製造後のことで、試作車はこれに応じてリニアモーターの搭載改造を試験期間中に実施しました。改造後は、車両基地内に車両側のリニアモーターと対になる「リアクションプレート」を設置し、走行試験を継続しています。

12-000形の量産車(3次車以降のデザイン)。試作車とはデザインが大きく異なります
12-000形の量産車(3次車以降のデザイン)。試作車とはデザインが大きく異なります

肝心のリニアモーター式の地下鉄は、大江戸線より早く、1990年に大阪市営地下鉄(現:大阪メトロ)長堀鶴見緑地線が開業し、先を越された形となりました。とはいえ、12-000形試作車が、日本初のミニ地下鉄車両として開発され、実績を残したことは事実。陰の立役者であった試作車は、現在は豊島区の公園に保存され、市民の憩いの場となっています。

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

関連鉄道コらム

鉄道コムおすすめ情報

画像

ラストランは2月10日

「青胴車」5001形は2月10日にラストラン。引退前の「乗車会」開催や、引退記念グッズ発売も。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

「サステナ車両」5月デビュー

元小田急の西武8000系が、車両基地を出場。デビューは2024年度末から2025年5月末に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、標準~望遠・超望遠レンズ編です。

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。