函館市の中心駅といえば函館駅ですが、本州と北海道を結ぶ北海道新幹線は同駅を経由せず、約18キロ離れた新函館北斗駅が最寄りの新幹線駅となっています。現在でも、本州から新幹線で函館を訪れる人は新函館北斗駅での乗り換えが必要で、将来新幹線が札幌へ延伸した場合は、観光客が函館を「素通り」することが懸念されています。
この課題を解決すべく、函館市では在来線の線路を使用する形で、新幹線を函館駅に乗り入れさせる構想が持ち上がっています。函館市では、2023年6月に、新幹線の函館駅乗り入れに向けた調査に関わる公募型プロポーザルを実施。8月に候補者が採択されました。
採択された事業者の案は、新函館北斗駅に到着した新幹線は、車両基地脇の保守基地線と、その先に新設する渡り線を経由し、函館本線に乗り入れるというもの。新幹線と在来線はレール幅が異なりますが、函館本線では、新たに新幹線用のレールを1本敷設し対応します。また、新幹線と在来線では車両の幅も異なりますが、函館~新函館北斗間では車体幅の制約となるトンネルがないため、幅の違いによる諸条件は考慮しつつも、ミニ新幹線車両ではなくH5系などのフル規格車両の乗り入れも可能になるとしています。
また、編成については明記されてはいませんが、資料内の図によると、東京方面~函館間の直通列車は3両編成で、新函館北斗駅までは7両編成と連結し、同駅で分割・併合するという構想のよう。札幌~函館間の直通列車は7両編成という想定のようです。
この資料は、あくまで今後の調査実施に向けた前段階のもので、この通りに実現するとは限りません。また、想定利用客数や採算性については、今後調査が進められることになります。
筆者の私見ですが、この資料内で示された7+3両編成という組成は、現時点では難しいのではないかと考えます。東北・北海道新幹線のE5・H5系は、時速320キロという高速走行を実現するため、先頭部の「鼻」が、約26メートルの先頭車のうち約15メートルを占めています。その分客室スペースが減ってしまうので、JR北海道はともかく、直通先であるJR東日本は、あまり良い顔はしないのではないでしょうか。もちろん、ハードの問題は運用次第で解決できる可能性もあるので、今後の調査次第となります。
直通列車が走るメリットに、遠くの駅での広告効果というものがあります。たとえば山形新幹線の場合、(失礼ながら)知名度が高くなかった新庄という地名が、東京駅などで日常的に表示されるようになりました。函館の知名度は高いですし、現在でも新”函館”北斗という行先は東京駅で表示されていますが、それでも「函館直通」というワードは数字で表せない効果があります。実現に向けた調査段階に入った、新幹線の函館駅乗り入れ構想。今後の展開が注目されます。