今週(11月27日~12月3日)一週間の鉄道ニュースから、鉄道コム注目の話題をご紹介。今回は、ローカル線の行く末を左右する2つのニュースを取り上げます。
まず1つ目は、11月29日に開催された「関西本線活性化利用促進三重県会議」のニュース。JR西日本や、三重県などの地元自治体が、関西本線の利用促進を目的に実施した会議です。今回その取り組みの一つとして、2024年秋に名古屋~奈良間を関西本線経由で直通する列車の実証運行を目指すことが明らかになりました。
もともと民間資本で建設された関西本線は、開業当時は現在の東海道本線と競合しており、名古屋と関西方面を結ぶ優等列車も多数運転されていました。しかし、東海道本線が名阪間輸送のメイン路線となった後は本数が減少。2006年に急行「かすが」が廃止された後、現在の関西本線非電化区間は、普通列車のみが走るローカル線となっています。
実証での運行形態は不明ですが、SNS上では「かすがの復活だ」などと話題となりました。折しも、JR西日本は28日に輸送密度が低い路線の現状を発表したばかり。関西本線亀山~加茂間の2020~2022年度平均の収支率は9.6パーセントで、100円を稼ぐのに1046円掛けている状況です。直通列車が、少しでもこの状況を改善する一手となるのでしょうか。
もう一つは、存続の危機に立たされている肥薩線の話題です。2020年の豪雨で被災し、現在も八代~吉松間で運転見合わせが続いている肥薩線。その復旧費用や、そもそも復旧するのか、という点で議論が続いていますが、前者の費用の課題について、動きが出てきました。
先週の24日に開催された「JR肥薩線再生協議会」の会合で、熊本県側は、市町村側が分担する復旧費用を県が肩代わりすると説明。県と市町村が合意しました。JR九州の復旧費用はゼロではないものの、復旧に一歩近づいたこととなります。一方で、当のJR九州側は、30日の社長定例会見において、古宮洋二社長が「持続可能性が課題」だと説明。復旧に慎重な姿勢を崩していません。
これはあくまで筆者の考えですが、肥薩線の復旧に向けた前向きな動きが出てきたのは、正直なところ驚きがあります。2022年に現地を訪問した際、熊本方面~人吉間の交通は高速道路・高速バスで確保され、途中の駅間では鉄道以外の公共交通手段でも需要をカバーできるのでは、という考えを持ちました。
被災前に観光列車が多数運転されていた肥薩線のような路線では、一つの路線の収支だけでなく、周辺路線や地元自治体との相乗効果も考慮する必要があります。とはいえ、窓口削減などの細かいコストカット策を続けるJR九州が、直接的な収支では明らかにマイナスである路線について、前向きな姿勢を見せることはあるのでしょうか。肥薩線の未来は、まだ安泰とはいえない状況です。