国鉄時代に開発されたEF65形は、箱型の直流電気機関車の決定版といえる車両です。後に登場したEF66形ほど特徴的なデザインではありませんが、貨物列車から、往年のブルートレインまで、さまざまな列車の先頭に立ってきました。
そんなEF65形は、「F形」「PF」などと、なにやら暗号めいた呼び方が使われることがあります。
この呼び方は、その車両が対応する装備の有無を現したもの。FはFreight=貨物、PはPassenger=旅客の略で、前者は貨車、後者は客車用の(製造当時としては)特別な装備を持っています。当時最先端だった貨車の10000系、ブルートレイン用客車の20系(後年の改造による)では、従来車以上の高速運転を実現するため、新しい仕組みのブレーキが使われていました。さらに、当時の20系の一部で搭載していたパンタグラフの緊急操作機能や、貨物列車けん引時の重連運転機能といったものもあり、これらの装備を持つことを表すため、この区分が生まれたのです。
この区分が登場したのは、一般仕様の0番台と並行して製造された500番台。まずはP形が登場し、続いてF形が生まれました。さらにその後、EF65形の決定版ともいうべき1000番台が登場。こちらはP形とF形の双方の機能を持つものとして、PF形と呼ばれました。なお、F形はP形の機能を全てもつ上位互換機種で、実際にはF形でもブルートレインのけん引は可能でした。
EF65形のほか、ED75形などでも、一部の車両のみがけん引対応装備を持つことによる区分がありました。一方で、EF81形0番台のように、最初から全車がこれら装備を搭載して製造された形式もあります。さらに、14系や24系、コキ50000系といった後継形式では、機関車が特殊装備を持たなくとも、けん引される側の性能をフルに発揮できるよう、配慮された設計となっていました。
1965年(PF形は1969年)にデビューしたEF65形は、2023年現在、JR貨物、JR東日本、JR西日本の3社に在籍しています。旅客会社の車両は、すでに定期運用を持っておらず、臨時列車や配給列車などで細々と走るのみ。JR貨物の車両は貨物列車のけん引でまだまだ活躍していますが、近年は置き換えが進められています。12月には「更新色」が消滅し、デビュー時の青・クリーム2色塗装となった車両が残るのみとなりました。