成田空港には、JRの成田線、京成の本線、成田スカイアクセス線が、旅客ターミナルに乗り入れています。このほかにも、かつて成田空港駅を名乗っていた東成田駅を発着する路線として、京成東成田線、芝山鉄道線の2路線が、空港敷地内を通っています。
芝山鉄道線は、空港建設に対する地元への見返りとして建設された路線です。会社の設立は1981年ですが、その後は着工までに時間を要し、路線が開業したのは約20年後の2002年のことでした。
そんな芝山鉄道は、さまざまな部分で外部環境に振り回されてきました。車両もその一つ。現在は京成電鉄からリースした車両を使っている同社ですが、かつては独自車両、それも「路面電車タイプ」を導入する計画があったといいます。
芝山鉄道が導入車両の方針を示したのは、1984年のこと。当時の鉄道雑誌(「電気車の科学」431号、「鉄道ジャーナル」206号)では、「芝山鉄道が市電タイプ車を導入」として、同社の取締役会で導入車両タイプを決定したことが報道されています。本文を読むと、正しくは「小型軽量電車を導入」ということなのですが、当時広島電鉄や熊本市電、名鉄美濃町線などで導入されているタイプ(=いわゆる「軽快電車」?)と説明されています。もちろん、道路上を走る車両とする必要は全くありませんが、設計上は路面電車に近い車両を検討していたことがうかがえます。また、後年の記事では「12メートル級」としていたことから、車体規模からも現在の車両とは異なることがわかります。
この小型軽量電車を導入する予定だった芝山鉄道は、車両仕様決定時点では直通運転を実施せず、芝山鉄道線内で折り返し運転とする構想だったようです。しかし、京成本線が現在の成田空港駅(旅客ターミナル直下の駅)へ乗り入れ、旧来の成田空港駅(現:東成田駅)までの路線は枝線となることが決まると、芝山鉄道は京成成田駅まで直通するよう、計画が変更されます。列車本数が減ることになる東成田駅の需要を、芝山鉄道線直通列車でカバーするという理由です。この際に小型軽量電車の導入計画は破棄され、京成から車両を調達することが決まりました。
直通計画が持ち上がった際は、芝山鉄道の車両のみが乗り入れる「片乗り入れ」の予定でしたが、最終的には「相互乗り入れ」となりました。芝山鉄道は現在、京成の3500形4両編成1本をリース。緑帯をまとったこの編成は、京成成田~東成田~芝山千代田間での運用のほかにも、ときおり他の路線で目にする機会があります。