阪神武庫川線の終着駅、武庫川団地前駅。同駅の周辺に広がる団地の敷地には、かつて武庫川線を走った車両が保存されています。さらに2024年1月時点では、駅から保存車両までの道が「阪神電車メモリアルルート」として整備中。その道中には、引退した車両の車輪や、役目を終えた踏切の遮断機、改札機などが置かれるようです。保存されている車輪は、5001形5022号車に使われていたもの。そして、その解説文には、実現せずに終わった阪神電車の計画が記載されていました。
それは、「5001形を武庫川線に転属させる」というもの。
5001形は、1977年に登場した各駅停車用の車両。上半身をクリーム色、下半身をマリンブルーのツートンとした、いわゆる「青胴車」のスタイルを、現在も維持する唯一の存在です。現在は新型車両との交代が進み、近い将来の引退へと確実に歩みを進めています。ちなみに、「5001形」という形式は1958年にも登場しており、この番号を名乗る形式は、これが2代目です。
武庫川線は、2020年6月上旬まで、1960~70年代に製造された車両が運用されていました。これらの置き換えに、5001形の充当が検討されていたようです。しかし、前述のとおり、5001形の登場は1977年。同年代の車両で置き換える意味が薄いと判断されたのでしょうか。結局、実際に武庫川線へ転じたのは、1995年に製造された各駅停車用の5500系。5001形の「武庫川線転属計画」は、幻に終わりました。
5001形は現在も本線での運用を続けていますが、ここ数年ですっかり数を減らし、その姿を見る機会も少なくなりました。武庫川線という「新たな居住先候補」を失ったいま、彼らに残された道は廃車のみ。そして、その道の果てにたどり着く日も、そう遠くはないようです。時代の流れで仕方ないことではありますが、少しでも道が長く続いてくれればと、青胴車を長年見てきた筆者は思ってしまいます。