1月23日、東北新幹線の大宮~上野間で架線の切断事故が発生し、JR東日本の新幹線はダイヤが大きく乱れました。原因については翌24日、架線の張力を調整する装置が故障し、架線が垂れ下がったことだと判明しています。
JR東日本は、不通となった新幹線の代替輸送として、特急「ひたち」のいわき~仙台間での延長運転や、東京→仙台間の臨時列車設定などを実施していました。一方で、今回の事故は大宮駅より南側で発生したことから、「新幹線を大宮駅で折り返し運転すればよかったのでは」という意見もありました。23日の事故発生後、新幹線は東京~仙台・高崎間で終日運転見合わせとなりましたが、大宮駅まで運転できれば、首都圏との移動は最低限確保できたというのです。
JR東日本はこれについて、「架線垂下箇所の復旧作業を行うために現地の電気を止める必要があった」と説明。当該箇所の停電手配のために大宮駅も停電したことから、大宮駅へ列車が入れなくなったといいます。
新幹線の上野~大宮では、上野方の新田端変電所、大宮駅北方の新大宮変電所の、2つの変電所から電気が供給されています。復旧のためには該当箇所の電気を止める必要がありますが、今回の事故が発生した地点も、大宮駅構内も、ともに新大宮変電所が電気を供給する区間。JR東日本の回答通りです。
仮に、大宮駅構内と本線上の上野側で供給する電気を区切る設備があれば、今回の事故が発生しても、支障区間への送電を止め、駅構内への送電を継続できたかもしれません。いえ、実は事故が発生した場所こそ、この電気を区切る設備があったポイントでした。
電車が走るための電気は、変電所から架線を経由して供給されています。新幹線のような交流電化の場合はその特性上、別の変電所から供給される電気を混ぜることはできません。そのため、各変電所から電気が供給される区間の境界には、両者を区分するための「セクション」(新幹線ではかなり大がかりな設備なのですが)が設けられています。
今回の事故が発生した場所は、まさにこのセクションがある「新与野き電区分所」付近でした。き電区分所付近では、線路上に張られている架線が入れ替わるのですが、今回は、この場所に備え付けられていた、架線を張るための装置が故障したといいます。
この装置がある場所だから事故が発生した、とも言えますが、架線が入れ替わる区間は他にもあるため、事故が発生した場所が悪かったという点も、大宮駅での折り返し運転ができなかった遠因となりそうです。もちろん、鉄道会社は常に安全側の選択を取る必要があるため、仮に事故がさらに上野方で発生していたとしても、復旧作業時の安全を考え、大宮駅構内を停電としていた可能性もあります。とはいえ、仮に事故がもう少し東京寄りで発生していれば、対応は変わっていたかもしれません。