鉄道コム

鉄道コらム

新幹線でスマホの充電が「一瞬だけ」途切れるワケ 時速300キロ運転を支えるスゴイ仕組み

2024年3月31日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

ここ最近の新幹線車両では、座席にコンセントが備えられており、スマートフォンの充電などに使用できます。3月16日のダイヤ改正では、JR東日本でコンセント未設置だった車両がすべて引退。新幹線全体を見ても、座席コンセントが全く無い車両は、JR西日本の500系のみとなりました。かくいう筆者もこの設備にはお世話になっており、着席するとコンセントに充電ケーブルのプラグを差し込むのが常です。

ところで、新幹線で乗車中に充電していると、充電が一瞬途切れる、ということが時々起こります。充電ケーブルの異常かと思いきや、そうではないよう。一体何が起こっているのでしょうか。

新幹線のコンセントで充電が一瞬途切れてしまう理由とは?
新幹線のコンセントで充電が一瞬途切れてしまう理由とは?

その理由は、新幹線に供給する電気が切り替えられているから。新幹線の走行用や車内サービス用(照明やコンセントなど)の電気は、線路上の架線から供給されています。その架線には、技術的な理由から「切れ目」があり、ここで一瞬だけ供給が途切れるのです。

新幹線のような交流電化の場合、隣り合う変電所からそれぞれ供給される電気は、その特性上、混ぜることはできません。そこで、各変電所から供給されるエリアの境界には、電気を流さない「セクション」(異相区分セクション)が設けられています。

新幹線と在来線では、セクションの仕組みが異なります。在来線では、セクションを通過する際、加速をやめた状態(惰性)で通過する必要があります。一方、新幹線の場合は、境界部分に「中セクション」を設置し、列車がこの部分に入ると、一瞬で供給する電気を切り替える仕組みが採用されています。そのため、時速300キロ超での走行時も、仕組み上は加速したまま通過できるのです。

新幹線(上)と在来線交流電化区間(下)のセクションの比較
新幹線(上)と在来線交流電化区間(下)のセクションの比較

この切り替えに掛かる時間は、わずか数百ミリ秒。ですが、一瞬だけ架線から供給される電気が断たれていることは事実です。そのため、セクションを通過する際には、スマホの充電も一瞬だけ途切れてしまうのです。

新幹線における「中セクション」通過時の動き。「3」の電気が断たれる時間は、実際には数百ミリ秒という一瞬です
新幹線における「中セクション」通過時の動き。「3」の電気が断たれる時間は、実際には数百ミリ秒という一瞬です

ちなみに、当たり前の話ですが、交流の特性は国によって変わるわけではありません。そのため、海外の高速鉄道でも異相区分セクションは設置されています。しかし、海外の場合は日本の在来線と同様、惰性で通過する方法が主流。セクションを通過するたびに加速をやめる必要があるため、日本の方式よりも設備は簡略化できる一方、列車側のロスは大きくなります。日本の新幹線のセクションの仕組みは、東海道新幹線のような高速・高頻度運転を支える要素の一つとなっています。

 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

関連鉄道リポート

鉄道コムおすすめ情報

画像

登場時デザイン撮影会で

京急600形30周年にあわせた撮影会が12月に開催。600形デビュー時デザインが撮影会限定で復活。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。