ここ最近の新幹線車両では、座席にコンセントが備えられており、スマートフォンの充電などに使用できます。3月16日のダイヤ改正では、JR東日本でコンセント未設置だった車両がすべて引退。新幹線全体を見ても、座席コンセントが全く無い車両は、JR西日本の500系のみとなりました。かくいう筆者もこの設備にはお世話になっており、着席するとコンセントに充電ケーブルのプラグを差し込むのが常です。
ところで、新幹線で乗車中に充電していると、充電が一瞬途切れる、ということが時々起こります。充電ケーブルの異常かと思いきや、そうではないよう。一体何が起こっているのでしょうか。
その理由は、新幹線に供給する電気が切り替えられているから。新幹線の走行用や車内サービス用(照明やコンセントなど)の電気は、線路上の架線から供給されています。その架線には、技術的な理由から「切れ目」があり、ここで一瞬だけ供給が途切れるのです。
新幹線のような交流電化の場合、隣り合う変電所からそれぞれ供給される電気は、その特性上、混ぜることはできません。そこで、各変電所から供給されるエリアの境界には、電気を流さない「セクション」(異相区分セクション)が設けられています。
新幹線と在来線では、セクションの仕組みが異なります。在来線では、セクションを通過する際、加速をやめた状態(惰性)で通過する必要があります。一方、新幹線の場合は、境界部分に「中セクション」を設置し、列車がこの部分に入ると、一瞬で供給する電気を切り替える仕組みが採用されています。そのため、時速300キロ超での走行時も、仕組み上は加速したまま通過できるのです。
この切り替えに掛かる時間は、わずか数百ミリ秒。ですが、一瞬だけ架線から供給される電気が断たれていることは事実です。そのため、セクションを通過する際には、スマホの充電も一瞬だけ途切れてしまうのです。
ちなみに、当たり前の話ですが、交流の特性は国によって変わるわけではありません。そのため、海外の高速鉄道でも異相区分セクションは設置されています。しかし、海外の場合は日本の在来線と同様、惰性で通過する方法が主流。セクションを通過するたびに加速をやめる必要があるため、日本の方式よりも設備は簡略化できる一方、列車側のロスは大きくなります。日本の新幹線のセクションの仕組みは、東海道新幹線のような高速・高頻度運転を支える要素の一つとなっています。