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昼も夜も走れれば一挙両得! 国鉄が開発した「欲張り装備」の特急型電車

2024年2月24日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

昼間に走る特急電車と、夜に走る寝台列車用の車両は、求められる装備が異なります。戦後の国鉄では、前者は181系や485系、後者は20系や24系といった車両が、それぞれ導入されていました。

しかし、2つの用途の形式を作り分けるのではなく、1つの形式で双方の目的を叶えることができれば、車両運用の効率が向上します。そのような「欲張り装備」で製造されたのが、1967年にデビューした583系グループでした。

昼夜兼用車両として開発された583系(べるちんさんの鉄道コム投稿写真)
昼夜兼用車両として開発された583系(べるちんさんの鉄道コム投稿写真)

583系登場時の座席は、急行型車両のようなボックスシート。この座面や背もたれは引き出せるようになっており、立てた状態では座席、引き出した状態では下段寝台として使えるというものでした。この構造自体は寝台客車のA寝台で採用されていたものですが、ともあれ昼夜兼用車両である583系を特徴づける装備でした。また、座席の背もたれを支えに中段、網棚に上段の寝台をセットすることで、3段のB寝台とする仕組みでした。

583系の寝台。昼間は座席として使用していました(EF65-1135さんの鉄道コム投稿写真)
583系の寝台。昼間は座席として使用していました(EF65-1135さんの鉄道コム投稿写真)

この設備によって、583系は昼行、夜行の列車を組み合わせた運用を組むことができました。たとえば東北本線の場合、昼行列車では上野~青森間は半日かかるため、単純に同区間を往復するだけでも2日がかりとなります。夜行列車も同様で、上野駅を出発した客車が帰ってくるのは翌々日でした。これを583系に置き換えれば、往路は昼行で復路は夜行(あるいはその逆)とすることで、運用効率を上げることができたのです。もちろん、寝台のセット・解除の時間や、車両検査といった制約があるため、24時間走りっぱなしというわけにはいきませんが、それでも他形式より高効率で車両運用を回すことができました。

583系(青)と、昼行用車両(赤)、夜行列車用客車(緑)の運用のイメージ。昼行用は夜間、夜行用は昼間は待機していますが、583系は昼夜走り続けることができました(実際には上野~仙台間などの別運用もありますが割愛)
583系(青)と、昼行用車両(赤)、夜行列車用客車(緑)の運用のイメージ。昼行用は夜間、夜行用は昼間は待機していますが、583系は昼夜走り続けることができました(実際には上野~仙台間などの別運用もありますが割愛)

1967年に交流60ヘルツ対応の581系が、1968年に50・60ヘルツ両対応の583系がデビューした583系グループは、山陽本線や東北本線の昼行・夜行特急で活躍。当初はデビュー時に使用された夜行列車から「月光型電車」とも呼ばれました。しかし、新幹線の開業により、充当されていた昼行特急は次第に減少。老朽化もあり、活躍の場は徐々に狭まっていきました。

1994年には「はくつる」の車両変更により、寝台特急列車での定期運用を終了。2013年には急行「きたぐに」が廃止され、定期運用が消滅しました。JR東日本では東北地方に波動用の編成が残されていましたが、こちらも2017年に引退。583系グループの運用は完全に終了しました。

2024年現在、日本では定期寝台列車自体が「サンライズエクスプレス」のみで、昼行の長距離列車は新幹線が主役。さらに長距離移動には航空便が使える現状、583系のような昼夜兼用車両が生まれる余地はありません。このような車両が生まれたのも、鉄道が、在来線が主役の時代だったからこそと言えるでしょう。

 

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