近年登場した豪華な在来線特急、たとえばJR東日本の「サフィール踊り子」、東武鉄道の「スペーシア X」、少し古いですが近畿日本鉄道の「しまかぜ」などには、これまた豪華な個室が用意されています。
では、新幹線には個室はないのか、というと、かつては東海道・山陽新幹線の100系、東北新幹線の200系が、2階建て車に個室を設置していたものの、これらはすべて引退済み。現在残る個室つき新幹線は、JR西日本の700系7000番台のみです。
2000年にデビューした700系7000番台ですが、1999年にデビューした16両編成の0番台に対し、こちらは8両編成。色も白地の0番台と異なり、グレー地のオリジナル塗装となっています。デビュー当時は「ひかりレールスター」用車両となっていましたが、2024年現在は「こだま」を中心とした運用に就いています。
「ひかりレールスター」は、関西~九州間のシェアを航空機から奪うべく設定された列車。東海道新幹線の「ひかり」同様に「のぞみ」の一つ下の種別という位置づけで、「のぞみ」よりも割安な料金で利用できる一方、指定席は2+2列配置(通常は3+2列)とするなど、快適性の向上を図っていました。その一環で設置されたのが、半個室のコンパートメント。天井付近にすき間がある構造で、完全な密閉空間ではありませんが、定員の4人の利用時では普通車指定席料金と同額で利用できるというリーズナブルさが売りでした。
「のぞみ」並みの速度、「のぞみ」以上の快適さ、「のぞみ」以下の価格を実現し、大人気列車となった「ひかりレールスター」ですが、2011年の九州新幹線全線開業で、山陽・九州新幹線直通列車の「さくら」が登場すると、これに置き換えられてしまいます。「さくら」などに使われるN700系7000・8000番台では、指定席設備は2+2列と、700系7000番台を踏襲しましたが、コンパートメントは設置されませんでした。2024年2月現在、「ひかりレールスター」として運転されるのは、新下関→岡山間の「ひかり」590号の1本のみ。通過駅は厚狭駅のみと、「ほぼ『こだま』」状態です。
肝心のコンパートメントですが、「こだま」では防犯上の問題などから、基本的に使用はできません。例外となるのは、コンパートメントのある8号車が指定席となる「こだま」845・856・858・860号の4本。いずれも博多~新大阪間を走破する列車です。また、山陽新幹線と同じ車両を使用している博多南線でも、平日の一部列車に限り、コンパートメントを利用することができます。
なお、JR東海とJR西日本では、16両編成のN700Sで、「ビジネスブース」という個室を提供しています。こちらはきっぷとは別料金で利用できるもので、700系のコンパートメントとは、少し毛色が異なります。