箱根登山電車の箱根湯本~強羅間では、最大3両編成の列車が走ります。そのバリエーションは、真ん中に中間車を入れた3両固定編成か、2両編成と両運転台車両1両を連結した編成の2通り。ここで、こんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
「両運転台車両だけの3両、つまり1+1+1の3両編成で走ることはないのか?」
その答えは、「No」。1+1+1の3両編成、物理的には組めるのでしょうが、営業運転で使用されることはありません。
なぜ、1+1+1の3両編成が見られないのか。その理由は、非常時の対応にあります。登山電車の各列車は、先頭部に運転士、最後尾に車掌が乗務しています。また、同社の車両先頭部はすべて非貫通式で、先頭部同士が連結しても、車両間を行き来できる通路はありません。そのため、1+1+1の3両編成を組むと、真ん中の車両には乗務員がおらず、隣の車両への移動もできない状態になります。これでは非常時、真ん中の車両に対して乗務員による避難誘導ができません。そこで、3両編成中には通路を持つ2両編成以上の車両を連結し、乗務員がどの車両にも行けるようにしているのです。
こうした事情から、旧式車両(100形)のうち、モハ1型の101~107号車(105号車は欠番)の6両が、1991年以降に改造を受けました。もとは両運転台式で、1両単独でも走れたモハ1型ですが、3両編成の運転開始を前に、101+102、103+107、104+106のペアで2両固定編成化。連結面の運転台は撤去し、座席を延長するとともに非常用通路を追設しました。また、登場時は2両固定編成で、連結面に非常用通路がなかった1000形も、3両編成への組み換えを機に連結面を改造。非常用通路を確保しました。
ちなみにこの通路、「非常用」ということもあり、普段は締め切りの状態。隣の車両への通り抜けはできません。扉を開けると、車内に警告音が響くようになっています。これは、急カーブの多い登山電車で、平常時にここを通るのは危ないからと思われます。実際に急カーブを走るときの連結面の動き方を見ると、その危険性が理解できるでしょう。
ちなみに現在、2+1両の3両編成では、基本的に箱根湯本駅基準で強羅寄りに1両、その後ろに2両を連結するパターンが大半ですが、まれに運用の都合で組成が逆になっていることもあります。また、2両編成の列車は、両方の車両に乗務員がいるため、両運転台車両を組み合わせた1+1の編成を見ることができます。