JR西日本は2月14日、山陽新幹線「こだま」用500系4本の置き換えとして、N700系を短編成化すると発表しました。長編成を前提とした設計の新幹線車両を短編成化する工事は、他社ではあまり例がなく、同社の長谷川社長も「珍しい工事」だと説明しています。
山陽新幹線は、全駅で16両編成の停車に対応していますが、特に「こだま」においては需要がそこまで多くないため、東海道新幹線よりも短い編成が使用されています。現在の山陽新幹線「こだま」で主に使用されているのは、700系と500系の2形式。前者はもともと8両編成で製造された車両(E編成)ですが、後者は「のぞみ」用として16両編成で製造されたものを、今回のN700系と同様、8両編成に短縮しています。
編成短縮は、要するに中間車を抜くことなのですが、500系の場合、鉄道模型のように、ただ車両を抜くだけというわけにはいきませんでした。従来のパンタグラフを撤去し、新2・7号車に新設したほか、搭載機器の配置変更も実施。加えて、旧10号車のグリーン車を指定席車両の新7号車とするため、車両連結位置を入れ替える手間もありました。単純なように見えて、意外と大規模な工事が実施されていたのです。今回改造されるN700系も、転用する号車は異なりますが、500系と同様の工事が実施されることとなります。
700系と500系が「こだま」に転用される前、山陽新幹線の「こだま」では、0系や100系が使用されていました。いずれも、もとは16両編成のような長編成を組んでいた車両を、編成短縮したものです。
100系で4・6両編成に編成短縮されたのは、もとは2階建て車両を4両組み込んでいた16両編成のV編成、通称「グランドひかり」。全9本が存在した同編成を、6両のK編成10本、4両のP編成12本に改造しました。2階建て車を除くほとんどが活用されたことになるのですが、9本の編成から計22本の編成を組成するには、先頭車が13本分(26両)不足します。そこでJR西日本は、廃車になった別編成(2階建て車2両のG編成)の先頭部分を、中間車に取り付ける、先頭化改造工事を実施。必要な先頭車を確保しました。
他の先頭車があるならば、その車両をそのまま使えばいいのでは、と考えてしまいますが、V編成は2階建て車4両を組み込んだ分の性能確保のため、先頭車がモーターつきとなっていました。一方、2階建て車2両のG編成は、先頭車はモーター非搭載。これをそのまま転用すると、編成間で性能の差が出てしまいます。これを避けるため、JR西日本はあえて大規模な工事を実施したのでした。