JR各社が毎年春、夏、冬に発売している「青春18きっぷ」。JR各社の普通列車(快速列車を含む)の普通車自由席が、最大5日間乗り放題となるきっぷです。お値段は1万2050円と、全国のJR線に乗れるきっぷとしては破格。鉄道ファンのみならず、学生の長期休暇の旅行などにも使われているようです。
鉄道ファンには常識ですが、一般の利用者からたまに聞かれるのが、「特急券を買えば新幹線・特急に乗れないのですか?」という疑問。もちろん、青春18きっぷは普通列車限定のため、特急券を買っても基本的には乗車できません。ただし、一部区間に限っては、例外的に特急列車へ乗車することができます。
特急列車に乗車できる例外区間は、石勝線の新夕張~新得間、奥羽本線の新青森~青森間、佐世保線の早岐~佐世保間、宮崎空港線の宮崎空港~宮崎間。2024年3月16日以降は、室蘭本線の東室蘭~室蘭間も対象となります。いずれも普通車自由席(自由席設定のない列車のみが走る区間では普通車指定席の空席)が利用可能。区間内のみの利用が対象で、そのまま対象区間外へ乗車する場合には、全乗車区間の特急券・乗車券が必要となります。
石勝線の新夕張~新得間で特急列車に乗車できるのは、そもそも同区間では普通列車の運転が無く、旅客列車は特急列車しか走っていないため。1981年に新夕張~新得間を含む区間が開業した石勝線ですが、開業当時からこの区間を通しで走る普通列車は運転されていません。普通列車の利用者が少ないという事業者側の都合によるものなので、この特例が設けられているのです。
佐世保線の早岐~佐世保間は、2018年のダイヤ改正で普通列車が削減された代替措置として、利用可能となった区間。朝晩が中心の普通列車と、同区間は各駅に停まる快速「シーサイドライナー」で、同区間の普通列車オンリーでの利用も難しくはないのですが、短距離に限られるからか、JR九州が便宜を図り、例外的に特急列車も利用可能としています。
奥羽本線、宮崎空港線、3月16日以降の室蘭本線も、佐世保線に近い理由での設定。ただしこれら3路線では、普通列車が全く走らない時間帯があるわけではありません。普通列車のみでの移動も可能な区間ですが、こちらも便宜を図っての特例となっています。
実際のところ、これらの特例は青春18きっぷ限定ではなく、普通乗車券に対する特例を青春18きっぷが準用したもの。普通乗車券でも同じように、対象区間では特急券なしで特急列車に乗車可能となっています。また、JR北海道・東日本全線などが利用できる「JR北海道&東日本パス」も同様です。ただし、奥羽本線新青森~青森間の特例は、2010年12月の東北新幹線全線開業にあわせて設定されましたが、青春18きっぷなどが対象になったのは、しばらく経った2012年のことでした。