鉄道路線の途中駅は、「ポートライナー」や山万ユーカリが丘線のような一方向しか運転されていない路線でない限りは、上下列車とも発着するのが普通です。しかし、日本には3ないし4箇所だけ、片方向の列車しか停まらない駅(路面電車の停留場を含む)があります。
その一つで、JR線の駅では唯一となる存在が、常磐線の偕楽園駅。文字通り、偕楽園の最寄り駅です。
徳川斉昭(15代徳川家将軍である徳川慶喜の父)が開いた庭園、偕楽園は、梅の名所として知られています。偕楽園駅は、梅の見頃のシーズンにあわせて開設される臨時駅。2024年度は、2月から3月にかけての土休日の一部に、日中時間帯に営業。普通列車のほか、特急列車も停車します。
この駅の特徴の一つが、先述した通り、片方にしかホームがないこと。営業時間中は、上野から水戸へ向かう下り旅客列車は全て停まるのですが、逆にホームの無い上り線側は、普通列車も通過してしまいます。そのため、水戸方面から偕楽園駅に向かう利用者や、偕楽園駅から上野方面に向かう利用者は、一度前後の赤塚駅または水戸駅まで乗車し、折り返す必要があります。折り返し乗車は通常はできないのですが、この区間では改札を出ない限り、折り返し可とする特例が設けられています。
また、ここ数年は、仙台~偕楽園間で臨時特急列車(水戸~偕楽園間は快速に種別変更)が運転されています。しかし先述のように、仙台駅からの上り線にはホームがありません。そのため、列車は一度赤塚駅まで進み、同駅で折り返す形となっています。ホームが無いためとはいえ、終点の駅を一度通過し、折り返して再びやってくるという、ユニークな列車です。
ただし、片側にしかホームがない駅として知られる偕楽園駅も、一時的に上りホームが設置されていたことがありました。それは、梅のシーズンではなく、第10回「全国緑化都市フェア」が開催された時。駅自体も普段とは異なり、5月まで営業していたそうです。