3月16日に開業する、北陸新幹線の金沢~敦賀間。このうち、全列車が停車する福井駅は、ホーム両側を線路に挟まれた「島式1面2線」という、新幹線駅ではかなり珍しい構造です。なぜこのような形となったのでしょうか。
北陸新幹線の金沢~敦賀間が着工したのは2012年のことですが、福井駅部分はそれより早く、2005年に着工していました。福井駅では、北陸本線やえちぜん鉄道を高架化する連続立体交差事業が進められており、この際に新幹線駅も一体で整備されたのです。古くから検討されてきた同事業は、福井市街地のルートが未確定となっていた北陸新幹線の計画を統合し、北陸本線と京福電気鉄道(現:えちぜん鉄道)を高架化するほか、新幹線駅を一体で整備するという流れが生まれました。計画当初は、新幹線駅は北陸本線の上に設置する予定で、金沢駅のような2面4線構造も検討されていたといいます。
しかし新幹線駅は、最終的に島式1面2線での建設が決定します。福井県などによる連続立体交差事業の事業誌によると、計画が進められていた1985年頃は、国鉄の赤字問題から、民営化に向けた議論が進められていた時期。そのため、コストカットが求められていました。加えて、1982年に開業した東北・上越新幹線では、全ての途中駅が待避線つきの構造となりましたが、当時はほとんど活用されず、「過剰設備」との意見が出ていたといいます。駅設備を必要最小限とした結果、新幹線福井駅は、島式1面2線という構造での建設が決まりました。
さらにその後、新幹線の建設費用の問題などから、新幹線福井駅は、北陸本線直上から京福の直上に位置が変更されました。見かけ上は京福の駅の上に新幹線駅がある3階建て構造ですが、実際には両駅は別の構造体。京福の駅に新幹線駅が覆いかぶさるような形とされていました。
しかし、京福は2度の列車衝突事故を起こしてしまい、2001年に県内路線が全廃となってしまいます。このまま福井駅を二重構造として進めてしまうと、京福の駅が入るはずだった空間が浮いてしまいます。これを避けるためか、新幹線駅は2階に整備するよう計画が変更されました。その後、えちぜん鉄道が京福の路線を受け継いで営業を開始しますが、こちらの高架化計画は二転三転。結局、えちぜん鉄道の駅は新幹線駅の東側に整備する形となりました。
最終的に完成した新幹線福井駅は、ホームの幅自体は他の新幹線駅とそん色ないのですが、1つのホームから上下方向の列車が発着するため、繁忙期などの混雑具合は懸念されています。昭和後期の国鉄の経営問題が、令和に開業する新幹線にも影響を及ぼした形です。新幹線駅では、通過線無しの島式1面2線という構造は、他に開業時の東北新幹線東京駅があったのみ。福井駅は、現在では最も規模の小さい新幹線駅となります。