3月16日のダイヤ改正で、東京~山形・新庄間の山形新幹線「つばさ」では、新型車両のE8系がデビューします。従来のE3系よりも時速25キロスピードアップした、最高時速300キロでの営業運転を実現。「つばさ」の最速達となる124・131号では、東京~福島間の所要時間を、改正前よりも4分短縮しています。
ところで、東北新幹線を走る「はやぶさ」「こまち」では、大宮~盛岡間を乗車区間に含む場合、「つばさ」「やまびこ」などとは異なる、少し割高な特急料金が適用されています。俗に「HS料金」とも呼ばれるこの料金設定は、「はやぶさ」では2011年3月の運転開始時から、「こまち」では2013年のE6系投入時(2014年3月までの対象列車は「スーパーこまち」として運転)から適用。いずれも現在は時速320キロで運転する列車で、高速運転という付加価値に対する加算料金と言えます。
であれば、今回E8系を導入してスピードアップする一部「つばさ」も、割高な料金が適用されてもおかしくありません。しかし、JR東日本の広報担当者は、「(スピードアップ対象の『つばさ』でも)変更はございません」と説明します。
現在は時速320キロで運転している「はやぶさ」「こまち」ですが、「はやぶさ」とE6系「スーパーこまち」の運転開始当初は、いずれも最高時速300キロと、従来の列車より速いとはいえ、現在よりも遅いスピードでした。また、「スーパーこまち」の運転開始当時、従来の「こまち」と比較した際の東京~秋田間の時短効果は5分程度でした。つまり、かつての「はやぶさ」「スーパーこまち」とE8系「つばさ」による最速列車は、最高速度も、新車投入による時短効果も、あまり変わりません。
であれば、「つばさ」も適用対象となってもおかしくなさそうですが、先の広報担当者は、「高速加算料金」を収受する列車および区間について、「車両の乗り心地・快適性、列車の速度、時間短縮効果などを他の列車等との兼ね合いも勘案し、設定」していると説明します。「スーパーこまち」登場時と異なり、E8系投入による時短効果が表れているのは、最速「つばさ」の124・131号の上下各1本のみ。このためだけに新規料金を設定するのは困難だったのかもしれません。
今後については回答がありませんでしたが、将来的にE8系の導入が進めば、「つばさ」でも高速加算料金が導入されるかもしれません。一方で、最高速度が低いE2系・E3系が引退すれば、東北新幹線系統は全列車が時速300キロ超での運転が可能となります。すると全列車が高速加算料金の導入対象となりそうですが、これは事実上の値上げです。これを避けるべく、時速300キロ以下の列車では、E8系デビュー時点からそのまま、高速加算料金の対象外となる可能性もあります。