鉄道の有名撮影地には、ファンが愛称をつけることがあります。「モノサク」(総武本線物井~佐倉間)や「スマシオ」(山陽本線須磨~塩屋間)のように、撮影地の両側の駅名を略したものや、「名神クロス」(東海道本線長岡京~山崎間)のように場所の特徴を表したものなど、さまざまです。
スマシオや名神クロスとならび、関西の有名撮影地の一つに挙げられているのが、通称「サントリーカーブ」。東海道本線山崎~島本間の撮影地です。
JR京都線の愛称がつけられている東海道本線京都~大阪間は、京阪神間を走る「新快速」などの一般列車のほか、特急「サンダーバード」「はるか」、さらには貨物列車やクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」など、さまざまな列車が走る区間です。サントリーカーブは、それらの列車がカーブを通るシーンを撮影できる場所として、昔から人気のスポットとなっています。
そのサントリーカーブの名前の由来は、あの飲料メーカーのサントリー。なぜこの名前かというと、撮影地の目の前が、サントリーの山崎蒸溜所だからです。
日本を代表するウィスキーの一つである「山崎」。サントリー創業者の鳥井信治郎が、良質な水や気候、立地にこだわった結果、ここ山崎の地に、その蒸留所が建てられたといいます。蒸留所の見学は事前予約が必要ですが、中では工場見学のほか、山崎をはじめとするサントリーの高級ウィスキー(中には「山崎」18年や「響」25年などの長期熟成ウィスキーも!)のテイスティングが可能となっています。
さて、件のサントリーカーブですが、15年ほど前まではガードレールでしか線路用地が区切られていなかったそう。しかし現在はフェンスが建てられており、普通にカメラを構えると、フェンスが視界を遮ってしまいます。撮り鉄が多い場所で、線路内侵入を防ぐべく整備されたそうですが、そもそも東西輸送の大動脈である東海道本線が、京阪間の市街地で大々的に防護されていなかったのもおかしな話で、安全上は現在の形の方が納得できます。
このサントリーカーブで撮影する際の立ち位置は、蒸留所の入口付近を除き、歩道のない道路となります。蒸留所関係か、大型トラックもよく通る道のため、撮影時は周囲の迷惑とならないようにしましょう。
余談ですが、サントリーカーブ最寄り駅の山崎駅の駅前には、コンビニのデイリーヤマザキがあります。同ブランドは運営会社の山崎製パンに由来する名前で、山崎製パンは創業者の親戚から名前をつけたということ。つまり、地名を採用した蒸留所およびウィスキーとは全く関係がないのですが、山崎駅前にあるのも、どことなく納得できてしまいます。