以前からたびたび問題視されている、いわゆる「撮り鉄」の行動。ここ最近、悪い意味で話題となっているのは、JR西日本の特急「やくも」に関してです。4月6日に新型車両がデビューし、国鉄型の旧型車両の置き換えが始まります。これを前に多くの撮り鉄が現地を訪れ、撮影地での行動が問題となっているのです。
鉄道ファンは、引退が発表された車両に集まる傾向があります。筆者も鉄道ファンの一人ですので、その行動の心理は十分に理解できます。しかし、訪問先で鉄道会社や地元住民に迷惑を掛けるのは論外。もちろん、鉄道ファン全員のマナーが悪いというわけではありませんが、残念ながら中には現場で暴走する人も見られます。
そんな鉄道ファンに愛想を尽かしたか、東京メトロでは近年、旧型車両の完全引退前に、それを告知したり、引退装飾を施して運転することがなくなりました。2020年に日比谷線の03系がひっそりと引退した当時、同社に取材すると、「千代田線の6000系が引退する際にさよならイベントを開催したところ、一部の鉄道ファンがホームや車両に殺到する事態となり、運行に支障が出たほか、多くのお客様にご迷惑をお掛けする事態となった」と説明していました。
また、JR西日本でも、かつて奈良線で活躍した103系の運用を終了する際、事前の告知なく引退させており、SNSでは「サイレント引退だ」などと話題となりました。こちらの場合は、「基本的に車両の引退については発表していない」と当時のJR西日本は説明した一方、その後に引退した和田岬線の103系では、事前に引退を発表しています。
では、現在問題となっている「やくも」のような特急車両は、告知なく引退させることは可能なのでしょうか。特急車両では、一般利用者からの注目度も高いほか、車両が変われば指定席の席番号が変わることがあるため、告知なしは難しそう。「やくも」を運行するJR西日本に聞きました。
同社によると、「鉄道ファンの皆様を含む、ご利用のお客様に対して告知が必要と判断した場合には、事前告知をすることがございます」ということです。たとえば、車両の置き換えにより、快適性や安全・安定輸送、バリアフリー面で利用者にメリットがある場合。また、事前告知しないことで、ある日急に引退すると知った鉄道ファンたちが殺到し、安全・安定輸送に支障をきたすことが考えられる場合にも、事前告知の対象になると説明しています。つまりは個々の状況次第ということでしょうか。
旧型車両の引退は、鉄道ファンにとってはもちろんですが、愛着を持って利用していた地元の方や、日々携わっていた鉄道会社の社員にとっても、最後は美しく迎えたいはずです。そのような思いに泥を塗ることのないよう、みんなが謙虚な心でラストランを迎えたいものです。