東海道・山陽・九州新幹線と、東北・上越・北陸・北海道・秋田・山形新幹線。前者グループと後者グループは、東京駅で接続こそしているものの、レールは繋がっていません。離れ小島状態の西九州新幹線を除くと、日本の新幹線網は、西方面と北方面の2つにわかれています。
レールが繋がっていないのであれば、両グループを走ったことがある新幹線車両はいないはずです。しかし、たった1編成だけ、かつて双方のグループを走った経験のある、「二刀流新幹線」とも呼べる車両が存在しました。
その車両は、1973年に落成した、試験車両の961形。全国の新幹線を走行できるよう開発された車両です。見た目は0系にそっくりですが、中身は別物。東海道・山陽新幹線方面と、東北・上越新幹線方面は、前者は電源周波数が60ヘルツ、後者は50ヘルツとなっているのですが、国鉄の新幹線車両では961形が唯一、その双方に対応していました。また、現代の「INTEROS」などに通じるモニタリング装置や、自動運転機能も搭載。旅客を乗せたことは無いものの、一部車内には接客設備もあり、中には試験装備として寝台も設置されていました。
961形は、落成当初は山陽新幹線で試験に用いられ、1979年には小山試験線(現在の東北新幹線小山駅付近)に陸送で搬入。こちらで走行試験に入ります。同年には時速319キロの速度記録を達成しましたが、これは当時の電車(電気機関車などを除く)における世界記録だったとか。0系以上の速度性能を目指して開発された961形の本領発揮でした。
その後、961形は東北新幹線の開業を見届けることなく、試験走行を終了。つまり961形は、現在の東北新幹線の線路を走ったことはあるのですが、厳密には、営業路線としての東北新幹線を走ったことはありません。961形は、国鉄分割民営化後も車籍が残されていましたが、1990年に廃車。現在は宮城県の新幹線総合車両センター内で保存されています。
ちなみに、現在保存されている961形は、200系と同じ白地に緑色ですが、現役時代は0系と同じ、白地に青色でした。961形は、東北新幹線を走った唯一の「青い超特急」でもあるということになります。