東京都建設局は3月29日、廃止された「上野動物園モノレール」に代わる新たな乗り物の公募審査結果を発表しました。
かつての上野動物園モノレールは、1957年に開業し、車両老朽化などで2019年に運転を休止。2023年に廃止となりました。東京都では、従来のモノレールに代わる存在として、小型モノレールなどのコンパクトな乗り物を想定した、新たな乗り物の導入を計画。2024年にこれを公募していました。
小型モノレールというと、東京都北区の飛鳥山などで見られる「スロープカー」のような乗り物が存在します。しかし、公募の結果選定されたのは、「ジェットコースターと同様の構造を利用した脱輪の心配のない高い安全性の乗り物」という、新たな形態の乗り物でした。
この乗り物は、ジェットコースターに似た仕組みで動きます。線路には勾配が設けられており、上り勾配はモーター駆動で走行するとのこと。ジェットコースターの巻き上げ区間のような形です。下り勾配では位置エネルギーを使用。つまり、登った場所から坂道を下る勢いで走行するようなイメージです。当たり前ですが、この乗り物は一般的な輸送機関のため、ジェットコースターのようなスリリングな動きをする乗り物ではありません。
審査結果の公表文書内では触れられていませんが、この乗り物は、かつて東京大学生産技術研究所と泉陽興業、泉陽機工が共同で開発した「エコライド」そのものです。この乗り物は、2006年に研究が始まり、2008年には東京大学西千葉キャンパス(現在は廃止)内の実験線が完成。実用化に向けた試験が実施されていました。車両側には動力装置を持たず、地上の引き上げ設備とブレーキだけで動かせるエコライドは、省エネに配慮したエコな乗り物として実現したのですが、残念ながらこれまで採用に至った例はありませんでした。今回の上野動物園の採択案がエコライドであれば、これが初採用となります。
ちなみに、エコライドを売り出している泉陽興業は、ジェットコースターや観覧車など、遊園地のアトラクションを手掛けている会社。2021年に横浜で開業したロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」も、同社が運営しています。
廃止された上野動物園モノレールは、園内の移動手段として活躍してきましたが、もともとは、将来の都市部における新たな移動手段のテストとして、当時まだ開発途上だったモノレールを建設した経緯がありました。形は異なりますが、新たな都市部の交通手段として開発されたエコライドが、上野動物園モノレールと同じ場所に敷設されるのも、何かの縁でしょうか。
東京都建設局は、新たな乗り物について、2024年度に設計に着手し、2026年度末の運用開始を目指すとしています。