JR北海道は、3月29日付で発表した「JR北海道グループ中期経営計画2026」において、中期経営計画後を見据えた構想として、札幌~新千歳空港間、札幌~旭川間の高速化を検討すると発表しました。
千歳線の札幌~新千歳空港間は、新千歳空港のアクセス列車、快速「エアポート」が走る区間。現在の最高速度は時速120キロで、最速列車の所要時間は33分です。函館本線の札幌~旭川間は、特急「ライラック」「カムイ」が30分~1時間間隔で運転されている大動脈。こちらも最高時速120キロで運転されており、最速列車は1時間25分で両駅を結んでいます。
JR北海道は両区間について、軌道強化、線形改良、最高速度の向上、高架化による踏切解消による、大幅な所要時間の短縮を構想。前者は最速25分、後者は最速60分を目指すとしています。
目的地までの所要時間に対する速度「表定速度」を、現在のキロ数と発表された所要時間で計算すると、札幌~新千歳空港間は時速112キロ(小数点以下は四捨五入、以下同)、札幌~旭川間は時速137キロとなります。いずれも現在の在来線最速列車以上で、札幌~旭川間は一部の新幹線よりも速い数字となっています。
両区間の現在の表定速度は、札幌~新千歳空港間で時速85キロ、札幌~旭川間で時速97キロ。先述した通り、両区間とも最高時速は120キロなのですが、表定速度は途中駅での停車時間や加減速の間を含むため、最高速度よりも遅い数字となります。であれば、両区間とも最高速度は従来以上となるのは必然。特に札幌~旭川間では、計算上の表定速度を考慮すると、時速160キロ程度(またはそれ以上)での運転を目指していると考えられます。
JR北海道は、「新幹線札幌開業までは新幹線工事に注力します」と、当面は2030年度末予定の北海道新幹線延伸開業を重視していく構えです。しかし、その後の事業展開として、利用の多い在来線区間の輸送品質向上に取り組むことで、収入増と北海道の活性化を目指すという姿勢を示しています。
かつてのJR北海道は、キハ281系に始まる振り子式気動車の導入や、幻に終わったキハ285系の開発など、高速化を志向してました。しかしながら、2011年の「スーパーおおぞら」脱線・火災事故以降、同社は安全性・安定性対策の重視に舵を切り、最高速度の低下やキハ261系の車体傾斜装置の使用停止など、スピードアップとは逆の方向へと進んでいました。
今回の発表内容は、もちろん安全性を軽視するわけではなく、あくまで安全対策を十分に施した上での構想ではありますが、かつてのJR北海道の勢いが復活しつつあるのかもしれません。