クルマを運転するには自動車免許が必要なのと同じように、日本で鉄道車両を運転するには、「動力車操縦者運転免許」という免許が必要です。
動力車とは、法律で「(狭義の)鉄道」「軌道」の車両に該当する、(狭義の)電車、気動車、機関車、路面電車、トロリーバスなどのこと。これらを運転するために必要なのが動力車操縦者運転免許で、新幹線、蒸気機関車、リニアモーターカーなど、細かく12の区分が設けられています。
動力車操縦者運転免許の特徴は、他の乗り物の免許とは異なり「一般人では取得できない」という点です。鉄道の免許は、国が指定した「動力車操縦者養成所」でなければ取得できません。その養成所は鉄道会社の研修所に含まれており、基本的に部外者には門戸は開かれていません。そのため、鉄道会社の社員ではない一般人が「動力車操縦者運転免許を取得したいので入所させてください」とお願いしても、それは不可能なのです。
鉄道以外のお客さんを乗せて走る乗り物は、免許は一般人でもおおむね取得可能です。バスやタクシーの営業運行に必要な「二種免許」は、民間の教習所で取得可能です。飛行機では、段階的に資格を取得する必要がありますが、条件を満たしていれば、航空会社や自衛隊などに入らなくとも、報酬を目的とした飛行に必要な「事業用操縦士」の試験を受けることができます。船舶は、特に大型船の場合は1人で操縦できる乗り物ではないため、他と一概には比較できませんが、ボートや小型の旅客船などが操縦できる「小型船舶操縦士」であれば、一般人でも比較的簡単に取得可能です。
乗り物 | 必要な免許 | 備考 |
---|---|---|
鉄道 | 動力車操縦者運転免許 | 「甲種電気車」「新幹線電気車」など12区分あり |
自動車 | 自動車運転免許 | 「普通自動車」「大型」など区分あり 事業扱いの運転には各区分の「第二種」取得が必要 |
飛行機 | 自家用操縦士 事業用操縦士 准定期運送用操縦士 定期運送用操縦士 |
「自家用」では「事業」扱いの飛行は不可 飛行形態に応じた資格が必要 |
船(小型船舶) | 小型船舶免許 | 1級、2級など区分あり |
船(小型船舶以外) | 海技士(航海) | 1級から6級まで区分あり 商船系・水産系学校の卒業が必要(例外あり) その他「機関」「通信」などの資格も |
鉄道の免許を取得するための養成所は、JR各社と大手私鉄、および一部の地方私鉄が設置しています。設置していない事業者では、他社の養成所に入所させてもらい、設置事業者の社員とともに研修を受けています。京成電鉄と新京成電鉄のように、同じグループ間でよく見られるものですが、中には遠く離れた養成所に入所することも。たとえば、2010年の映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」では、一畑電車に中途入社した主人公(中井貴一さん演)が、京王電鉄の養成所で運転士になるための研修を受けるシーンが描かれています。
なお、法律で動力車に含まれない、ケーブルカーやロープウェイ、保線用の機械、さらには工場内のトロッコ機関車や遊園地の遊覧鉄道は、動力車操縦者運転免許は不要で運転可能です。とはいえ、全くの未経験者に操作を任せるのは危険なので、ほとんどの場合は社内資格を必要としていることが多いようです。