鉄道コム

鉄道コらム

港町から消えた「交通の遺構」が動物園に! 令和の時代に残る横浜市電の思い出

2024年6月2日(日) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

2024年現在の人口は、約377万人。横浜市は、国内の政令指定都市でトップクラスの人口規模を誇る都市です。横浜駅を中心に、東京、横須賀、藤沢方面などへの鉄道網が充実している同市ですが、かつてはこれに加え、市営の路面電車(市電)が、縦横無尽に駆け回っていました。

横浜市電は1904年、民間企業の横浜電気鉄道が路線を開業させたのがはじまり。1921年、横浜市が同社を買収し、公営の路線になりました。その最盛期は昭和30年代。北は生麦(鶴見区)から南は杉田(磯子区)まで、路線総延長は51キロ以上にのぼりました。しかし、その後は規模が急激に縮小。路線が次々に消えていき、1972年に全路線が廃止されました。

廃止から50年以上経ちますが、横浜市電の遺構は現在も複数残されています。最も有名なのは「横浜市電保存館」ですが、ここ以外にもいくつかの市電車両が保存されています。今回は、市電保存館以外の場所に眠る市電たちを、簡単にご紹介します。

ひとつは、野毛山のげやま動物園の1500型1518号車。入口から少し直進したところに保存されています。

野毛山動物園に保存されている1518号車。2021年には、動物園開園70周年のマークがついていました
野毛山動物園に保存されている1518号車。2021年には、動物園開園70周年のマークがついていました

1500型は、1951年にデビュー。当時、アメリカでは「PCCカー」と呼ばれる高性能な路面電車車両が開発されており、日本でもそれに倣った「和製PCCカー」と呼ばれる車両が各地でみられました。横浜市電では当形式がそれに該当する車両で、市電の全廃まで運用されました。

現在の1518号車は、車内の座席の交換、片方の運転台で機器類の完全撤去といった変化はあるものの、外観は現役当時に近い姿を残しています。動物園は入場無料なので、気軽に会いに行けるのも魅力です。

もうひとつは、久良岐くらき公園(港南区)の1150型1156号車。公園中心付近の「桜の森」の近くに置かれています。

久良岐公園に保存されている1156号車。停留場も再現されています
久良岐公園に保存されている1156号車。停留場も再現されています

1150型は、1952年に製造された車両。車体は1500型と似ていますが、こちらは走行機器類に、廃車された別車両の流用品を使用しています。市電の全廃まで運用された点は、1500型と同じです。

久良岐公園は1973年に開園。1156号車はその頃から保存されていたものの、状態の悪化により、一時は解体計画も持ち上がったようです。しかし、2011年に有志が立ち上がり、同年11月、修復作業に着手。翌2012年春に美しい姿を取り戻しました。現在、一部の扉部分などに破損が見られるものの、車両の状態は比較的良好に見えます。なお、これら以外にも、1508号車の車体、車輪など、市内の学校にも複数の遺構が残されているようです。

横浜から路面電車が消えて、はや半世紀。ですが、その面影は、いまもわずかに見ることができます。時間を見つけて、港町・横浜の思い出をたどってみるのも、おもしろいかもしれません。

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

ラストランは2月10日

「青胴車」5001形は2月10日にラストラン。引退前の「乗車会」開催や、引退記念グッズ発売も。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

「サステナ車両」5月デビュー

元小田急の西武8000系が、車両基地を出場。デビューは2024年度末から2025年5月末に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、標準~望遠・超望遠レンズ編です。

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。