迫力ある姿が魅力のSL列車は、今も昔も人気の乗り物です。2024年現在は、JR北海道の「SL冬の湿原号」、JR東日本の「SLばんえつ物語」および高崎地区の各列車群、JR西日本の「SLやまぐち号」、東武鉄道の「SL大樹」、真岡鐵道の「SLもおか」、秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」、大井川鐵道の「SLかわね路号」といった列車が存在しています。
当たり前ですが、SLは客車を引っ張る機関車なので、一般利用者がSLに乗ることはできません。その利用者が乗るため、SLの後ろに連結されているのが客車ですが、実はこちらもSLに負けず劣らずの「レア車両」なのです。
大井川鐵道と、「SL冬の湿原号」のカフェカー、高崎地区の一部列車で使われるのが、いわゆる「旧型客車」。古いものは戦前に製造された車両もあるこのタイプの車両は、冷房はなく、窓の下には栓抜きがあったりと、最新の電車では見られないレトロな雰囲気が楽しめます。
「SL冬の湿原号」と「SL大樹」では、14系が使われています。SL列車で使われる14系は、特急列車への使用を想定して開発された車両。「SL冬の湿原号」用車両はボックスシートに改造されていますが、「SL大樹」用では、製造当時のままのリクライニングシートを装備した車両が使われています。また、最近はあまり使われていないようですが、夜行列車用にリクライニング角度を深くした「ドリームカー」車両も、「SL大樹」用に導入されています。
「SLばんえつ物語」、高崎地区の各列車、「SLパレオエクスプレス」などで使われているのは、12系客車。こちらは急行型の客車で、14系に似た見た目ですが、座席は向かい合わせのボックスシートとなっています。12系は、もともとは1970年の大阪万博開催に向けた波動用車両として開発されたもの。SL列車用に12系が使われ始めたころは、旧型客車に比べれば「普通の客車」という扱いでしたが、今やデビューから50年以上が経過した、貴重な車両となっています。
なお、12系では改造により、見た目が大きく変わったものも存在します。たとえば、「SL大樹」では開放式展望デッキを設けた車両が使われています。また、「ばんえつ物語」の場合は、フリースペース車とグリーン車は車体を新造したものに載せ替えています。さらに、新造車両が投入される前の「SLやまぐち号」では、レトロ風やオリエント急行風など、車両別にテーマを設けて改造した12系が使われていました。
「SLもおか」で使われているのは、1977年以降に国鉄が導入した、50系客車。他のSL用客車の形式と異なり、50系は通勤需要にも対応した形式です。「SLもおか」では車内を改造せず使用しているため、SL列車としては全国で唯一、座席が横向きの「ロングシート」や吊り革がついた車両が使われるという、ある意味ユニークな存在となっています。