関東1都6県、すなわち東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県の中で、新幹線の駅が無いのはどこでしょうか。千葉県と茨城県です。しかし、県内を新幹線路線が全く通らない千葉県と異なり、茨城県では新幹線が「素通り」しています。
大宮~宇都宮間の最短距離を線で結ぶと、茨城県が少しだけ西側に飛び出た部分を通ります。ここは古河市と五霞町。東北新幹線では大宮~小山間にあたります。並走する東北本線では、古河市内に古河駅がありますが、東北新幹線は両市町をただ通過するだけとなっています。
1982年に大宮~盛岡間が開業した際、新幹線単独駅として建設されたのは白石蔵王駅のみ(くりこま高原駅は1990年、水沢江刺駅は1985年、七戸十和田駅は2010年の開業)でした。東北新幹線の駅が設けられたのは、小山駅や宇都宮駅などのように、基本的には在来線と接続する場所。特に那須塩原駅、新白河駅を除く11駅(1982年当時)は、東北本線以外の支線と接続する駅が選定されていました。古河市内では、直線状に建設された東北新幹線は東北本線と交差する部分がなく、新幹線駅を設置するメリットは、当時の国鉄にはなかったと考えられます。
加えて、古河~小山間は、新幹線の経路では15キロ程度。現代では北陸新幹線加賀温泉~芦原温泉間のように駅が設置されてもおかしくない距離ですが、当時としては、新幹線の駅を設置するには距離が短めでした。そのような背景から、東北新幹線は茨城県を素通りする状態が今まで続いているようです。フル規格の新幹線が通る31都道府県のうち、新幹線の駅がないのは、茨城県が唯一です。
地元では、古河市など6市4町が「東北新幹線茨城県新駅設置期成同盟会」を設置し、新幹線駅の設置を目指して、JR東日本に要望する運動を続けています。とはいえ、古河市など2市2町が設置した「東北本線『(仮称)南古河駅』設置促進期成同盟会」の運動と比較すると、新幹線駅の方はあまり積極的ではない様子。栗橋~古河間に新駅「南古河駅」(仮称)を設置する運動は、駅建設費用の試算といった具体的なレベルまで話が進んでいるようですが、新幹線は現在も要望レベルにとどまっています。
ちなみに、東北本線や東北新幹線と並走している東武日光線、東北自動車道は、埼玉県と栃木県の間で、茨城県ではなく群馬県を通過しています。東武日光線には「新古河駅」がありますが、この駅は古河市ではなく、渡良瀬川を挟んだ埼玉県加須市向古河に所在しています。
また、冒頭の問いかけで新幹線が通らない県としてご紹介した千葉県は、実はかつて「成田新幹線」という新幹線の計画がありました。反対運動などで実現はしなかったものの、完成していれば関東1都6県すべてに新幹線が通っていたことになります。