京浜急行電鉄は5月10日、「京急グループ第20次総合経営計画」を策定したと発表しました。同社はその中で、「鉄道事業における次世代型オペレーションの推進」として、「信号⾃動制御化拡⼤」を盛り込みました。
かつての鉄道では、駅の信号やポイントは、すべて駅員が手動で制御していました。しかし現代では、「CTC」(列車集中制御装置)というシステムが、都市部の路線からローカル線まで広く導入されており、拠点駅のCTCセンターから、路線の一部、あるいは全ての信号やポイントを、遠隔で操作できる仕組みが整えられています。さらに、予定したダイヤの情報からCTCを自動で制御するシステム(PRC、自動進路制御装置)や、さらに高度化を図った運行管理システム(JR東日本の「ATOS」など)も、都市部では一般的な存在です。
一方、京急の信号制御は、そのほとんどが旧来の駅扱い。つまり、品川駅や神奈川新町駅など、ポイントのある駅ごとに信号(ポイント含む)を扱う担当社員が配置され、ダイヤに応じて手動で切り替える体制となっているのです。
とはいえ、決して京急が技術的に遅れているわけではありません。たとえば先のCTCは、1954年に久里浜線で導入されたのが、日本初の採用事例。そんな京急が駅扱いの体制を敷いているのは、ダイヤ乱れ時の復旧を迅速化するためです。
自動で信号を制御するシステムは、通常時は効率的に運用できますが、ダイヤが乱れてしまうと、柔軟な対応が難しいことがあります。そこで京急は、あえて手動で信号を扱う体制とすることで、輸送障害発生時に臨機応変に対応できるようにしているのです。
とはいえ、制御駅ごとに担当社員を配置する体制は、効率的だとはいえません。そこで京急は、次世代型オペレーションとして、信号⾃動制御化の拡⼤を進めています。
京急の広報担当部署によると、この施策は「保安度の向上や効率化を図るため」というもの。すでに信号取扱所では「運行管理支援システム」の導入を進めており、旧来の体制からの転換に向けて動き始めているようです。
ただし同社によると、現在の段階では、あくまで既存の組織体制のまま、各信号扱所の効率化を図る取り組みだということ。今後、信号扱所の統合といった動きとなるのかと質問しましたが、広報担当者は「現段階では『このような方針で進める』という宣言の段階。詳細はこれから深度化していきます」と説明しました。