鉄道車両で進行方向の向きに配置される座席「クロスシート」の前後間隔は、「シートピッチ」という数値で表されます。シートピッチは、当然のことながら、グリーン車や普通車といった座席グレードで差がつけられているほか、その車両が登場した年代や用途によっても違いが見られます。
東海道・山陽・九州・西九州新幹線の500系を除く全形式(例外あり、後述)と、東北・北海道・上越・北陸新幹線を走るE5系、H5系、E7系、W7系では、普通車のシートピッチは1040ミリ。在来線特急列車では900ミリ台後半(たとえばJR東日本の「ひたち」「ときわ」用E657系は960ミリ)が多いことを考えると、かなりゆとりのある数値です。
一方で、東北新幹線のE2系と、山形新幹線「つばさ」などで使われるE3系およびE8系、秋田新幹線「こまち」などで使われるE6系では、シートピッチは980ミリという設定。決してべらぼうに窮屈な環境ではありませんが、E5系などよりは少し狭くなっています。E2系が狭い理由は簡単に言うと「古いから」なのですが、E3系、E6系、E8系は、定員を確保するためというのが理由のよう。少しでも間隔を詰めて座席を増やしたということです。
山陽新幹線の「こだま」で活躍する500系は、少し特殊です。主に指定席車として使われる6号車は、かつてグリーン車だった車両をほぼそのまま転用したもの。座席そのものや座席間隔は変わらないので、シートピッチは1160ミリと、普通車では破格の数値となっています。一方で、その他の車両のシートピッチは、N700系などより狭い1020ミリ。時速300キロ運転を実現するために開発された500系は、先頭の流線形部分が非常に長く、客室内まで食い込んだ影響で、従来の車両(300系)と座席配置を変える必要がありました。シートピッチにその影響が表れた形です。
また、東海道・山陽・九州新幹線、西九州新幹線のN700系、N700Sも、両先頭車のシートピッチは1023ミリと、中間車より狭め。500系同様、流線形部分の食い込みが影響しています。加えて、東海道・山陽新幹線のN700Sでは、11号車の車いすスペースを従来車両より拡大した結果、その他の座席は先頭車と同じ1023ミリ間隔での配置となりました。
総合すると、東海道・山陽・九州新幹線、西九州新幹線では先頭車以外(N700Sでは11号車も)、「はやぶさ」「こまち」の連結列車では「はやぶさ」、「やまびこ」「つばさ」の連結列車では「やまびこ」に乗車した方が、広めの座席空間で移動できることになります。