鉄道コム

鉄道コらム

現在の役割は「ライトアップのモニュメント」? 令和の大阪市に里帰りした大阪市電

2024年6月27日(木) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

昭和の高度成長期を中心に、かつて日本の主要都市には、多数の路面電車が走っていました。それは、関西の中心地、大阪も例外ではありません。現在は地下鉄が網の目のように走っている大阪ですが、かつては路面電車(市電)が、バスとともに市内の公共交通の一端を担っていました。

大阪市電は、1903年に開業。その最盛期は1940年代で、路線総延長は110キロ以上。北は守口、東は百済(現在のJR大和路線東部市場前駅付近)、西は天保山(大阪メトロ中央線大阪港駅付近)や桜島、南は出島(南海本線湊駅付近)と、大阪市を飛び出し、守口市や堺市といった近隣の街にも根を張っていました。昭和30年代に入ると、大阪市電は徐々に規模を縮小。1969年、その役目を終えました。

大阪市電の車両は、その廃止後も一部が解体を免れ、保存されています。保存車がもっとも多く集結しているのは、大阪メトロの緑木検車場に設けられた市電保存館ですが、通常は非公開。ですが、数は少ないものの、いまも気軽に会いに行ける市電車両があります。

そのひとつが、3012号車。大阪市住之江区の道端に置かれています。この地域に住んでいない人が偶然通りかかったら、「なんでこんなところに電車が!?」と驚くことでしょう。

住之江区の道端に保存されている大阪市電3012号車。側面についている長方形の線は、LEDの電灯です
住之江区の道端に保存されている大阪市電3012号車。側面についている長方形の線は、LEDの電灯です

3012号車は、1956年にデビューし、大阪市電の廃止まで運用された3001形という形式の1両。アメリカの高性能路面電車車両「PCCカー」に倣った「和製PCCカー」としても知られています。3012号車は市電の廃止後、大阪府富田林市内の幼稚園に移り、園内の図書室として使用されていたそうです。しかし2019年、幼稚園の移転とともに3012号車は「卒園」し、大阪市に戻ってきたのだとか。長らく大阪市を離れていた3012号車にとって、久々の「里帰り」となりました。

現在の3012号車は、線路にこそ乗せられているものの、屋根上の機器類は取り払われた「鉄の箱」状態です。側面部分にはLEDの電灯がついており、季節や時間帯によってはライトアップされることもある模様。図書室だった3012号車は、里帰りによって「ライトアップのモニュメント」へと転身したようです。

このほか、同じ住之江区内の幼稚園に3001形3044号車、守口市に2601形2665号車(色は現役時代と変わっています)など、複数の車両が残されているほか、遠く離れた広島県の広島電鉄では、いまも3両の大阪市電車両が現役で走っています。うち2両は、上半身ベージュ、下半身ブラウンという、戦後の大阪市電の車両を模した塗装になっており、往年に近い姿を見ることができる貴重な存在となっています。

広島電鉄で現役を続ける元・大阪市電の車両(写真左)。写真の車両は大阪時代、1651形という形式でした
広島電鉄で現役を続ける元・大阪市電の車両(写真左)。写真の車両は大阪時代、1651形という形式でした
 

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

登場時デザイン撮影会で

京急600形30周年にあわせた撮影会が12月に開催。600形デビュー時デザインが撮影会限定で復活。

画像

東武の車両「記録推奨度」

この車両、いつまで走る? 引退が危ぶまれる車両や、見た目が変わりそうな車両をご紹介。今回は東武編です。

画像

4000系が「機関車風」塗装に

「西武秩父線開通55周年記念車両」11日運転開始。4000系をE851形を模した塗装に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、高倍率ズーム・広角レンズ編です。

画像

京都鉄博に381系

12月12日~17日に特別展示。16日までは、一部で「スーパーくろしお」色ラッピングも実施。

画像

11月の鉄道イベント一覧

数百件の情報を掲載中。鉄道旅行や撮影の計画には、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。