三重県を走る三岐鉄道の北勢線は、レールの幅がJR在来線より狭い「ナローゲージ」を採用している、珍しい路線です。小ぶりな車両がトコトコ行き交う北勢線ですが、三岐鉄道北勢線の沿線自治体や三岐鉄道などで構成される「北勢線事業運営協議会」は、同線の今後のあり方を検討するため、現在調査を実施しています。
北勢線は、2003年までは近鉄が運営していました。同社が赤字路線であることを理由に北勢線の廃止を表明した際、地元自治体の補助のもと、三岐鉄道が路線を引き受けることとなり、現在に至っています。その後20年以上が経過した北勢線ですが、近年は人口減少や施設老朽化などといった課題に悩まされています。運営協議会では、2025年度以降の北勢線の将来に対する検討に向けて、2023年度からコンサル会社による事前調査を実施。今年5月下旬に中間報告が発表されていました。
北勢線の課題はさまざまですが、今後も事業を継続していくには、老朽化した車両の置き換えが必要だといいます。現在の北勢線の車両は、すべて近鉄から引き継いだもの。車齢は新しくても30年以上、最も古いものでは60年以上という経年車ぞろいです。コンサル会社では、24両すべてを更新する場合、伊予鉄道の更新事例をふまえると、50億円以上が必要になると試算しています。
北勢線同様、ナローゲージを採用する四日市あすなろう鉄道では、経営移管後に一部の老朽車両を置き換え、その他の車両も徹底的なリニューアルを実施していました。その際の新造費用は、1両あたり1.6億円前後。ただし、この際の新造車はモーターなしの車両に限られるため、モーターつき車両の新造には、これ以上の費用がかかることが想定されます。
また、同社の新車導入時、車両を保有する四日市の市議会において、ナローゲージという特殊な環境で用いる車両ゆえに、車両製作の打診に応じたのは事実上1社だけだったと報告されています。北勢線の新車導入に際しても、同様の課題が浮かび上がるおそれもあります。
今回の中間報告では、今後の調査方針として、鉄道改良または他モードとの比較を実施すると説明しています。比較においては、鉄道存続、鉄道敷地を活用した他モードへの転換、一般道経由の路線バスへの置き換えの、大きく3つの枠組みで調査するということ。その詳細として、現状のまま新車を投入するパターンのほか、レール幅を変更(改軌)し中古車両を投入する、改軌しDMV化する、LRT化する、BRT化するなど、10のケースで評価。その中から4案程度に絞り、収支予測に基づく定量的評価を実施する方針を示しています。
現段階で改軌やBRT化が確定したわけではなく、ナローゲージのまま北勢線が存続する可能性も残っていますが、この評価結果によっては、北勢線の姿は大きく変わることになるかもしれません。