東急電鉄の路線は、東横線、田園都市線、大井町線、目黒線、東急新横浜線、池上線、東急多摩川線、世田谷線、こどもの国線の9路線。このうち、こどもの国線を走る営業列車では、他社線との直通運転を実施していないにも関わらず、普段は東急電鉄のエンブレムを描いた車両は使われていません。
こどもの国線で普段使われているのは、Y000系という車両。この車両は、東急電鉄の持ち物ではなく、みなとみらい線の運行事業者でもある、横浜高速鉄道が所有しています。
こどもの国線は、子ども向けの施設「こどもの国」のアクセス路線として、1967年に開業しました。この当時は、運行業務は今と同じく東急が担っていましたが、路線の施設を保有していたのはこどもの国協会でした。その後、沿線の宅地化が進むと、こどもの国線の通勤路線化が検討されます。この際、社会福祉法人(1981年までは特殊法人)であるこどもの国協会が営利目的である通勤路線に関わることが問題となりました。結果、みなとみらい線の開業(2004年)に向けて設立されていた横浜高速鉄道が、施設を保有する形態となることが決定。1997年に施設が譲渡されました。
現在こどもの国線で活躍しているY000系は、こどもの国線の通勤路線化(2000年完成)のため、1999年に導入された車両。目黒線向けに導入された東急3000系をベースとしていますが、カラーリングは黄色・青色の帯を巻くオリジナルのもの。また、前面には横浜高速鉄道のロゴが描かれています。車体そのものの形(ドア数を除く)や車内デザインは、当時導入されていた東急車と大きく変わらないのですが、その外観デザインは、「東急の車両ではない」と主張しているかのようです。なお、Y000系が導入される前のこどもの国線では、初代7000系など、東急が保有する車両が使われていました。
Y000系は2両編成3本が導入されていますが、2024年現在、1本は「うし電車」、もう1本は「ひつじ電車」というラッピング車両となっています。そのため、黄色と青色の帯を巻いたオリジナルデザインの編成は、1本のみのレアな存在となっています。
また、普段の定期列車こそY000系で運転されているこどもの国線ですが、途中駅の恩田駅近くには東急電鉄の「長津田工場」があり、出入場する東急の車両が同線を走る姿が時折見られます。さらに、こどもの国線では繁忙期に列車が増発されますが、近年はその運用に、東急の2代目7000系が就いたこともあります。