成田空港の運営会社である成田国際空港(NAA)は3日、有識者や周辺自治体などでつくる「『新しい成田空港』構想検討会」による「『新しい成田空港』構想とりまとめ」を、国に報告したと発表しました。
1978年に開港した成田空港は、開港時からある施設を中心に、老朽化が進んでいます。一方、航空需要はインバウンド効果などで今後も増大することが見込まれており、さらには国外の空港との競争力も確保する必要があるため、成田空港の機能強化に向けた動きが進められています。今現在、既存滑走路の延長や新滑走路の整備が進められている成田空港ですが、さらなる機能強化策として、旅客ターミナルの再構築、航空物流機能の高度化、空港アクセスの改善などが、構想検討会によって検討されてきました。
鉄道媒体である鉄道コムとして注目したいトピックは、「旅客ターミナルの再構築」です。成田空港は現在、開港時から使われている第1ターミナル(T1)と、1992年開業の第2ターミナル(T2)、2015年開業の第3ターミナル(T3)の、3つの旅客ターミナルがあります。とりまとめでは、これらを集約し、1つの新たなターミナルを建設することが提言されています。成田空港では、T1に成田空港駅、T2に空港第2ビル駅が接続していますが、新ターミナルが建設されれば、鉄道駅も新駅に移転することになります。
新ターミナルは、T2の南側が候補地です。整備案では、まず新ターミナルの半分を建設し、T1を閉鎖。この際、現在の成田空港駅も閉鎖し、新ターミナル直下に建設する新しい駅に機能を移転します。その後、新ターミナルの残り部分を建設し、T2・T3の役目を置き換えます。
また、とりまとめでは、空港アクセス線の課題についても触れられました。現在アクセス路線として乗り入れているのは、JR成田線、京成本線・成田スカイアクセス線の3線。いずれも単線区間があり、ダイヤに制約があります。とりまとめでは、「成田空港が引き続き羽田空港と共に首都圏空港として十分に機能を発揮するためには、鉄道アクセスの利便性向上・輸送力増強が必要不可欠」とし、鉄道事業者などの関係者も交え、議論を深めることが必要だと提言しています。
首都圏の空港では、東京都心に近い羽田空港の利便性が高く、2010年の再国際化以降は、成田空港から羽田空港に航空便の発着地を移す会社も現れています。2031年度にはJRの「羽田空港アクセス線(仮称)」も開業予定で、利便性はさらに向上する予定です。しかし、東京港に隣接している羽田空港は、将来的な拡張規模に乏しく、首都圏の空港として今後の航空需要増大に対応するには、成田空港の拡張が不可欠です。今回のとりまとめは、あくまで構想段階のものではありますが、空港アクセス鉄道にも大きな影響を与える内容となっています。