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たった1本だけのスペシャルな特急電車とは? 「特殊任務」も持つJR東日本の漆色の車両

2024年8月12日(祝) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

JR東日本では、2024年8月現在、在来線の特急型車両として、11形式を運用しています。そのうち、他の10形式と異なる特別な立ち位置にあるのが、2007年に落成し、翌2008年にデビューしたE655系です。

E655系「和」(なごみ)。たった1本しか存在しない特急型車両です(KT-uranusさんの鉄道コム投稿写真)
E655系「和」(なごみ)。たった1本しか存在しない特急型車両です(KT-uranusさんの鉄道コム投稿写真)

「和」(なごみ)の愛称を持つE655系は、「漆(うるし)色」の重厚な外観が特徴的。一般旅客を乗せるために5両編成で運転する場合は全車両がグリーン車となる、「ハイグレード車両」です。座席は一般的なリクライニングシートが基本ですが、内装は落ち着きのある上質感を演出したもので、他の車両にはないようなインテリアとなっています。

一般旅客向けの5両は、全車両がグリーン車です(はやぶさ32号さんの鉄道コム投稿写真)
一般旅客向けの5両は、全車両がグリーン車です(はやぶさ32号さんの鉄道コム投稿写真)

そして、E655系は、一般旅客が乗車できる列車のほか、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下がJR線で移動される際の「お召列車」用車両という、重要な役目を持ちます。この場合は、通常の5両編成の中間に「特別車両」(TR車)を連結し、6両編成で運転されます。なお、お召列車として運転される際は、TR車の前後の5両は随行員などが乗車する車両となっており、当たり前ですが、一般旅客が乗車できるわけではありません。

E655系は、先代のお召列車用車両である客車「1号編成」の老朽代替と、観光需要の創出という、2つの目的で開発されました。前者のお召列車用車両としては、E655系は区間を選ばず、どこでも走行できる性能が求められます。そのため、E655系は直流1500ボルト、交流20000ボルトの50ヘルツ・60ヘルツに対応。くわえて、ディーゼル機関車にけん引されて非電化区間を走行できるよう、片方の先頭車には電源供給用の発電機を搭載しています。つまり、架線電圧が異なる津軽海峡線(北海道新幹線との共用区間)や、レール幅が異なる秋田・山形新幹線の在来線区間を除けば、(保安装置や車体限界などは別として)理論上は全国すべてのJR在来線を走行できる性能を有しています。

観光需要の創出という目的では、JR東日本はE655系を団体臨時列車に投入し、ハイグレードな旅の提供に活用しています。E655系は定期運用を持っていないため、一般利用者が乗ることができる機会は、この団体臨時列車のみ。JR東日本グループの旅行会社では、時折この団体臨時列車に乗車できるツアーを販売しています。施行回数は多いわけではありませんが、決して「乗ることができるチャンスが全くない車両」というわけではありません。ハイグレード車両なので、値段も一般の特急列車よりは高めですが、「四季島」をはじめとするクルーズトレインと比べれば、手が届きやすい価格です。

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